世界で中国車のシェアが急伸している(イラスト/井川泰年)
国内の乗用車大手8社の今年上半期の世界販売台数は前年同期比2.3%減と苦戦している。一方、オーストラリアでは中国車が日本車を抜いて販売台数で首位に立ち、BYDは日本の軽EV市場にも参入してきた。中国メーカーが躍進する自動車市場で日本はどうすれば生き残れるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
世界の自動車業界で起きている「シー・チェンジ」
日本車が苦戦している。国内の乗用車大手8社が発表した今年上半期(1~6月)の世界販売台数の合計は前年同期比2.3%減の約1192万台で、スズキとダイハツを除く6社が前年実績を割り込んだ。中国市場での販売不振が主な原因だが、その背景にあるのは中国の新興EV(電気自動車)メーカーとの競争激化だ。
中国におけるトヨタ、ホンダ、日産、マツダの4社の販売台数は2020年に合計500万台以上あったが、昨年は4割減の約315万台になり、今年上半期は約117万台で、前年をさらに下回るペースで推移しているという。
その一方では、世界最大のEVメーカー中国・BYD(比亜迪)が7月28日に日本で軽自動車EV「ラッコ(RACCO)」を発売した。販売価格は214万5000円からで、政府の輸入車向けEV補助金15万円を適用すると最安モデルが実質199万5000円。
先行する日産の軽EV「サクラ」は政府の国産車向けEV補助金58万円を適用すると約187万円からで「ラッコ」より安いものの、航続距離は「ラッコ」の最下位モデルが210km、上位2モデルが320kmと「サクラ」の180kmを大きく上回る。
ホンダの軽EV「N-ONE e:」の航続距離は295kmだが、価格は約270万円からなので、EV補助金を適用しても「ラッコ」より高い。
さらに、「ラッコ」のエクステリア(外観)は軽自動車新車販売台数トップのホンダ「N-BOX」にそっくりで、ボディサイズもほとんど同じ。人気が高い電動の両側スライドドアを全モデルに装備している。日本の軽自動車市場を徹底的に研究したことがうかがえる。
ただ、「サクラ」の今年上半期の販売台数は4972台で前年同期の6割に満たず、ガソリン車「N-BOX」(10万2419台)の5%でしかない。「ラッコ」が日本のユーザーのEV嫌いや中国車に対するバイアス(偏見)を乗り越えられるかどうか、注視したい。
「ラッコ」は1つのトピックにすぎないが、いま世界の自動車業界では「シー・チェンジ(大転換)」が起きている。私は本連載で、今後10年くらいはHV(ハイブリッド車)が優位にあるだろうと予測したが、最近の中国EVメーカーの躍進ぶりを見ると、これは楽観的すぎたかもしれない。中国政府は欧米諸国と違って、まだEVに高い補助金を出しており、それを海外市場にうまく転嫁し始めているからだ。
日本メーカーも、この大きなうねりを的確に見極めなければ、進路を誤って劣勢に立たされる可能性がある。
