田代尚機のチャイナ・リサーチ

本当に絶好調? アメリカ消費をかさ上げしているものの正体

輸入品の関税引き上げの前に消費行動が加速か

 米中貿易摩擦が激化する中で、アメリカでは消費への影響が懸念されているが、10月の小売売上高(前月比)は0.8%増で市場予想を0.3ポイント上振れした。また、8月、9月はいずれも0.1%増であり、10月は持ち直している。消費の基調は悪くない。

 もっとも、トランプ大統領は8月23日までに、半導体、通信衛星、モーター、化学品など中国からの輸入品、500億ドル相当に25%の追加関税をかけており、9月24日からは2000億ドル相当の輸入品に対して10%の追加関税をかけている。

 2000億ドル相当分については、水産物、衣料品、家電製品など一般消費財が含まれ、米中の新たな合意がない限り、1月1日から税率がさらに15%加算されることになっている。

 今のところ、消費への顕著なマイナス影響は見られない。とはいえ、1月1日からの税率引き上げ前に一般消費財を買っておこうとする消費行動が足元の消費を加速させている可能性がある。そうした理由から、クリスマスセールにも同様の効果が見られるかもしれない。

 FRB(連邦準備制度理事会)は金融システムの正常化のために利上げを続けている。現状でも、新車販売台数や新築住宅販売件数などの伸びに陰りがみられるが、ここからさらに金利が上昇すれば、これらの高額消費には大きな影響が出るだろう。そうなれば、小売り全体に消費の鈍化は波及することになる。

 アメリカの2016年における名目GDPに占める民間消費支出の割合は68.8%。日本の55.9%、ドイツの53.3%、中国の39.3%などと比べると高い水準となっており、消費の低迷による景気への影響は相対的に大きい。

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