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俳優・神山繁さんの終活 骨董コレクションを生前整理した心遣い

 特筆すべきは華麗な交流だ。神山さんは伝説の実業家である白洲次郎さんや「日本の知性」と呼ばれた文芸評論家の小林秀雄さんらに師事して、深い教養を育んだ。そんな教養人が心血を注いで集めたのが骨董品だ。自らの骨壺を事前に準備するほどのコレクターだった神山さんは、再発の発覚後、コレクションの整理も始める。

「品物はいずれも超一流品ばかり。その価値が受け継がれるようにと、懇意にしていた骨董店のかたに託したようです。実は以前、私も『佐々木さんの欲しがっていたものをあげるよ』と言われて、鎌倉時代の壺をいただいたのですが、思いがけず“遺品”となってしまいました」(佐々木さん)

 家族の死後、遺品整理中に意外な「お宝」が見つかることは一般家庭でも珍しくない。高価なものは誰が受け取るかで争いが起きたり、金額に応じて相続税が発生する可能性もあるため、神山さんのように生前に処分しておくのが最善策だ。神山さんの心遣いを「お見事です」と相続コーディネーターの曽根恵子さんも絶賛する。

「骨董などの美術品や宝飾品から、鉄道グッズまで、趣味のアイテムは、買った時は高額でも、時代や流行により流通価格が下がって財産的な価値が低くなるというケースがあります。お父さんが大切に集めたコレクションも、家族にとっては無価値な邪魔物になるかもしれない。遺族が処分するのは大変な負担ですから、価値がわかる本人が引き取り先を見つけるべきです」(曽根さん)

 愛蔵品を惜しみなく手放した神山さんは、白洲さんが提唱した「葬式無用、戒名不用」という考えに共鳴し、自らもそのように話していた。

「神山さんは、『死んだら、ただの骨だよ』と、常々笑っておっしゃっていました。決して自分のことをひけらかす人ではなかったので、派手な芸能界で地味に見えたかもしれませんが、最期までスマートな生き方を貫いたかたでした」(佐々木さん)

 妻への配慮と趣味へのけじめ──名優の終い方は、どんな映画やドラマのヒーローよりも男らしい。

※女性セブン2019年3月28日・4月4日号

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