大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

安倍政権の「残念な政策」ワースト3、大前研一氏が発表

 ワースト第1位は、間違いなくアベノミクスだ。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という“3本の矢”で「名目成長率3%」を目標に掲げ、それに合わせて日本銀行の黒田東彦総裁が「2年で2%」を物価目標にして異次元金融緩和を始めたが、達成できないまま6年が過ぎた。3本の矢はすべて的を外れて“アベクロバズーカ”は不発に終わり、今後はその後遺症に苦しむことになる。

 失敗の理由は、アベノミクスは金利とマネタリーベースをいじるだけの20世紀型経済政策であり、高齢化、ボーダレス化、サイバー化などが進んだ21世紀経済には全く効果がないからだ。6年も成果が出なければ、企業経営者でも野球やサッカーの監督でも、とっくの昔にクビである。安倍首相と黒田総裁はいいかげんに失敗を認め、「目標未達」の責任を取るべきである。

 第2位は外交政策全般だ。当初、安倍首相は「戦後レジーム(*第二次世界大戦後に出来上がった世界秩序の体制や制度)からの脱却」を唱えたが、それを警戒したアメリカ政府に冷遇された。このため慌てて手のひらを返し、アメリカ連邦議会での演説で「日本にとってアメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした」と歯の浮くようなおべんちゃらを言うなど、180度変節してアメリカ従属に戻ってしまった。

 また、北朝鮮による日本人拉致問題は全く進展していない。安倍首相は真剣に取り組んでいるかのように見せているが、実際はトランプ大統領に金正恩朝鮮労働党委員長への伝言を頼んでいるだけで、安倍政権には事態を打開する手立てが何もない。北朝鮮メディアに「主人のズボンの裾をつかんで見苦しく行動した」と揶揄される始末である。

 ロシアとの北方領土返還交渉も完全にロシアペースとなり、日本は手詰まり状態だ。安倍首相はプーチン大統領と25回も会談していながら、何の成果も出せていないのである。

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