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先送りされた年金の財政検証 制度維持のため「死ぬまで働く社会」を提唱か

年金制度を維持するために、どんな社会が待ち受けているのか

 金融庁が6月にまとめた報告書で、年金だけでは老後資金が2000万円不足すると指摘されたことで、年金制度への不安が高まっている。今後の年金制度はどうなっていくのか。経済アナリストの森永卓郎氏は、政府・厚生労働省が目論む年金制度の将来と、高齢者の生活がどうなるかについて、次のように展望する。

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 政府はすでに、このままでは年金制度が立ちいかなくなることがわかっていたため、「一億総活躍社会」という謳い文句のもと、「みんな70歳まで働け!」という方針を押し進めている。

 たとえば、2014年に行なわれた公的年金の将来見通しを試算した厚生労働省の財政検証では、高齢者の労働市場への参加が進むケースとして、2030年の65~69歳男性の労働力率を67%と想定し、そうなれば現行水準並みの年金給付が維持できると結論づけた。

 この試算が意味するのは、3分の2の男性が70歳まで働き続け、年金保険料を払い続けることが、年金制度の崩壊を免れるための絶対条件ということである。逆にいえば、それが実現できなければ、所得代替率(厚生年金収入の現役世代の手取り収入に対する割合)50%以上の年金給付は維持できなくなるということだ。

 2019年は5年に1度の財政検証の年だ。その新しい財政検証の結果はすでに出ているが、参議院選挙を考慮してか、今はまだその内容が隠されている。参院選後に公表を延ばしたこと自体、国民にとって相当厳しい内容であることは想像に難くない。

 おそらく、65~69歳男性の労働力率は70.1%、65~69歳女性の労働力率も53%台に設定され、それなら所得代替率50%以上を維持できる。すなわち、「みんな死ぬまで働け!」という結論になるのは間違いないだろう。

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