投資

日米欧の金融政策からわかる「ドル・ユーロ・円」3通貨の方向性

 ただし、ユーロ/ドルに関しては、単純に、「ユーロ売り米ドル買い」が続くとは考え難い。

 米国の利下げは、トランプ大統領の圧力に屈した「予防的な利下げ」と言える。米国の雇用統計を見れば明白だが、米国経済は今後、悪化の方向に向かう可能性は十分あるものの、決して悪い訳ではない。

 米中の貿易摩擦問題が、これからの米国経済に悪い影響を与えるだろうが、通常ならば、積極的に「利下げ」を行う状況ではない。

 つまり、米国経済は現時点ではそれほど悪くないのだ。

 ところが、欧州経済はすでに悪い状況に陥って久しい。欧州の中で比較的に良い状況を保ち、欧州経済を支えてきたドイツ経済にも、悪化傾向が出てきている。そして、ECBが金融緩和政策を打ち出してきたが、米国も同様に金融緩和政策を採択している。

 つまり、ユーロもドルも、それぞれに金融緩和なのだから、金融政策では相殺される。そうなると投資家は、実質的な経済を比較することになる。すでに悪い状況に陥っている欧州に対して、現時点ではそれほど悪くない経済の米国。結論として、「ユーロ売り米ドル買い」となるわけだ。

 ドル/円に関しては、日米の金融政策を材料にすると、今後は、「ドル売り円買い」が進む可能性が高い、と述べた。つまり、今後のドル/円の為替レートは小さくなる(円高に向かう)可能性が高い。そして、ユーロ/ドルに関しては「ユーロ売り米ドル買い」と述べた。ユーロ/ドルの為替レートも小さくなる(ドル高に向かう)可能性が高い。

 ユーロ/円の為替レートは、ドル/円とユーロ/ドルを「掛け算」して求める裁定価格だから、今後、小さくなるもの同士を「掛け算」すれば、より一層に小さくなる。つまり、ユーロ/円の為替レートは、今後下がる(円高に向かう)可能性が高い、という結論になるだろう。

(2019年9月26日東京時間17:20記述)

◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行う。HPは「松田哲のFXディーラー物語」(http://matsudasatoshi.com/)。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。

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