大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

東京の不動産市場 ミニバブルは当分続くと大前研一氏

 不動産というものは、国境を越えて交易する。たとえば、上海のマンションを売却して得た利益で東京のマンションを購入したり、その逆のことをしたりできるのだ。それが、今のアメリカのシアトルやハワイ、オーストラリアのシドニーなどでの中国マネーによる不動産の暴騰につながっているわけで、このブームは東京だけのものではない。

日本の富裕層や企業が1980年代後半のバブル期にハワイやロサンゼルスなどでコンドミニアムやホテル、商業ビルを買い漁っていたのと同じである。

中国人にとって、不動産が自由に売買できる東京はさらに魅力的だ。おそらく、一般の中国人に日本で土地・不動産を買えるかと聞けば、多くが難しいと答えるだろう。中国では土地は共産党のものであり、所有できないからだ。しかし、実際は日本ならいくらでも売買できる。

オーストラリアはFIRB(外国投資審査委員会)の事前認可が必要で、買うことはできるが、オーストラリア人にしか売れない(※)。アメリカは地理的に遠い。だから、近くて割安な日本の不動産は、中国人の富裕層にとって垂の的になるわけだ。

【※JETROのHPによれば「長期滞在者は、投資を目的とした住居を購入することはできない。居住者でない外国人が、投資を目的とした中古物件を購入することは、原則できない」とされる】

日本は相続税などが高いから、帰化や永住まではしないだろうが、中国をはじめとするアジアの富裕層は「最後は東京」ということになるかもしれない。欧米人の富裕層の多くは「最後はロンドン」と考えるが、アジアにおける東京のポジションは、それに近づいているような気がする。

だから、今の東京ミニバブルは当分続くと思う。つまり、バブル期とは構造が異なり、財源が日本ではなく海外にあるので、今後もしばらくは枯渇することがないと考えられるのだ。

※週刊ポスト2016年6月17日号

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