中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

日本人に蔓延する「値上げアレルギー」「コスパ信仰」のさもしさ

 まさにコレなんですよ。結局値下げをするということは質が悪くなるか利益を圧縮させているかのどちらかで、サービス提供側に多大なる負担を強いている。すでにカナモリさんが約10年前にこうした提言をしていたというのに、企業の体質は変わらず、消費者も相変わらず安物に群がり続けている。

 ソフトバンクが吉野家の牛丼の無料キャンペーンなんかをやると行列ができ、通行の妨げになったり、郊外店の場合は渋滞になったりする。0.1カラットのダイヤモンドをプレゼントすると銀座の高級宝石店が宣言したら5000人が行列! ミスタードーナツが半額キャンペーンをやれば30分待ちとなり、店員はツイッターでこれらの客に対して「アホみたいに買ってくバカどもなんなんだよ」などと暴言を書き、炎上する。企業のツイッターキャンペーンでも「フォローした上でハッシュタグをつけて応募」なんてやると、たかだか500円程度のものであっても数千単位のリツイートになったりします。

 まさに「さもしい」の一言に尽きますが、その最たるものが元ZOZO社長の前澤友作氏が2019年1月5日にTwitter上で展開した「総額1億円を100人にばらまく」企画です。前澤氏をフォローしてRTしたら抽選で100人に100円が当たるという企画。自分がいかに困窮しているかや、夢があることなどをアピールする「クレクレタコラ」みたいな連中が続々と登場し、結果、前澤氏のフォロワー数は約500万人も増えました。

 ある程度のプライドがあるのであれば、こんな企画に応募するのは恥ずかしいと考えるはずですが、まさに「さもしい」状態が普通になっているだけに、上級国民様1人に対して下級国民500万人が群がる地獄絵図となったのです。

 2020年、東京五輪で外国人が押し寄せて「日本は安いね!」と大喜びする様が各所で見られることでしょう。こうした報道を見て「日本の製品は安いのに性能がいい。日本最高!」なんて思うのではなく、「日本の製品は性能がいいのに安過ぎる、日本バカか!」と憤慨するぐらいのガッツを持つ個人が増え、企業の値上げは容認するようになるべきです。

 数年間はそれは「痛み」かもしれませんが、個人・企業がその痛みに耐えようやく物価上昇&賃金上昇は達成されるのです。今はとにかく「さもしい」人間であることをやめ、「コスパ」という言葉を意図的に使わない心がけを持ってもいいのでは。今のままではあまりにも企業がかわいそうです。そして、働く皆様方もそうした企業の一員なのですから気持ちは分かりますよね?

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