中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

日本人に蔓延する「値上げアレルギー」「コスパ信仰」のさもしさ

 1990年代まで牛丼は「400円」というのが定番で、それに皆納得して、というか「安いね」と言いながら食べていました。それが2000年代に入ると200~300円台でいったりきたりするようになった。

 マクドナルドのハンバーガーは1985~1995年までは「210円」を維持していましたが、130円にガーンと値下げし、その後は「59円」や「65円」などとなりました。私はフリーライターになった1年目、この59円バーガーを10個買い、毎食これを2個ずつ食べていました。何しろ当時の年収は60万円だったので、助けてもらったのは事実です。こうした時代を経て、今では「100円」というのがマックのハンバーガーの価格に落ち着いたのです。

 結局「消費者様」の「値上げするような商品は買わないぞ!」という圧力に企業が屈した形がこの20年以上続いているわけです。もうここで主張したいのは以下です。

「消費者は値上げしたからって文句言うな。企業はやむを得ず値上げせざるを得ない場合は躊躇なく値上げしろ。クレームは無視しろ」

安さだけを求める客は本当に「お客様」なのか

 あとは企業に対して「値下げ勝負に乗るんじゃない!」とも言いたい。

 先日、私はブログに〈「日本は貧乏」説に「でも日本は住みやすいし楽しいから充分」と反論するのはもうやめないとオレら後進国まっしぐらだぞ〉という文章を書きました。そこで書いた内容は次の通り。サンフランシスコでは年収1400万円でも貧乏人、という状況下、彼らは日本にいつでも来られるけどオレらは行けない――これって惨めだよな。このまま物価も賃金も安いままだと水源、土地、マンション、企業まで何でもかんでも金持ちな国から買われてしまう。そんな状態になってもいいのか、エッ! バーンバーン(コーフンのあまり机を叩く音)といったことを主張しました。

 これがとんでもないアクセス数を稼いだのですが、納得する方は多かったものの、猛烈な反発もありました。基本的には「日本は快適だからいいじゃん」や「物価が高いと困る」といったものです。いや、それがダメなんですよ。物価が上がらないから賃金も上がらないのです。

 物価を上げられない理由は「お客様は神様です」「オラオラ消費者様のお通りだ~!」的意識が日本人に深く埋め込まれてしまったからではないでしょうか。値上げをした時に「もう行かない!」「もう買わない!」と言われてしまったら企業の側は「どうぞどうぞ」と言うべきです。

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