中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「全部ハンコのせいだ!」と八つ当たり 地方移住で部屋が借りられない40代男の苛立ち

 今回はまず、「『印鑑証明書』を用意してください」と言われます。よくわかりませんが、社長である私が保証人となるからだそうです。えぇと、今、私は「お試し移住」で佐賀県唐津市の某エリアに住んでおり、今回借りた家が正式に決まってから住民票を移そうと考えていました。

 それでも「とにかく印鑑証明が必要です!」と言われたので、東京で登録していた、印鑑証明書を母に取ってもらいました。母にはそれをレターパックで送ってもらうことに。

 これで済むのかと思ったら、「その印鑑証明書の『実印』と、あなたの場合は法人契約なので、『社判』を持ってきてください」と言われる。あの~、実印って東京で使ったことが1回もないので今、どこにあるのか分からんのですよ……。あまりにも使わなかったので……。そして、社判については、実際に経理関係をすべて取り仕切っている東京にいる弊社社員・Y嬢が管理しているので、私は持っていません……。

 いや、まあ言われてみれば、印鑑証明が必要なら、実印も必要になるのは当然なんですけどね(逆に実印を押すことになるから、印鑑証明が必要になる)。でも、そこに社判まで求められると、もうパニックですよ。

 結局、この3つのハンコ関連のモノを私がなかなか揃えられないために、今、マジで家が借りられないかもしれない事態に陥っています。いや、すべて私のズボラさが原因なのはわかっています。えぇ、いろんな手続きを後回しにしていたり、ちゃんと調べてから行かなかったから、こんなことになっているんです。でも、このままいくと「ハンコ」が理由で最悪東京に戻らなくてはいけない可能性も出てきてしまいました……。

 私は不動産屋との交渉では「結局、これって『信用』の話ですよね? 私の会社の経営状況がまったく問題ないことは決算書を見れば分かりますよね? それでもダメなんですか? ハンコについてはスイマセン、本当にこれまで東京で使うことがなかったのでまったく自分の想定外でした。そこは申し訳ありません。『ハンコ文化』に疎すぎました」とまずは謝罪しました。

 そのうえで、「半年分の家賃を一気に払うので、なんとか契約してもらえませんでしょうか……」というお願いもして、今は返事待ちです。

 自分が悪いのは重々承知しているのですが、その怒りの持って行き場がわからず、今は「ハンコってバカ!」と言いたい気持ちです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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