大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

日本繁栄の起爆剤「メガリージョン」大前研一氏が考える2つの候補地

 しかし、ボリス・ジョンソン政権が今年1月1日にEUを完全離脱して再び国民国家に戻ったら、1月4日にロンドンから60億ユーロ(約7640億円)以上の株取引が一夜でEUの取引プラットフォームに移動し、2月にはロンドンは欧州最大の株式取引拠点としての地位をオランダのアムステルダムに明け渡したと報じられた。グローバルなボーダレス経済に背を向けた閉鎖的な国民国家からは、あっという間に繁栄が逃げていくのである。

 あえて「日本はどうすればよいのか」という問いに答えるなら、まず「国家」という前提を捨てよ、と言いたい。国防、外交、金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべきである。そうしなければ、21世紀にトランスフォームして繁栄の方程式を手に入れることはできないのだ。

 もともと私は日本を11の地域に分けて立法、行政、司法、徴税の権限を与える「道州制」の導入を提唱してきた。その考えは今も全く変わっていないが、道州レベルではなく1都市、1地域でもメガリージョンが誕生すれば、繁栄の起爆剤になると思う。

 たとえば中国で言うと、平安保険やファーウェイ、テンセント、DJIなどの巨大企業を生んだ深センや、アリババの本拠地である杭州だ。両都市は飛躍的に発展したが、広東省全体や浙江省全体が繁栄しているわけではない。

 日本でメガリージョンになる可能性があるのは、東京の築地・晴海・勝どきだろう。その臨海3エリアを職住近接の街として一体開発するのだ。横浜の大黒埠頭・山下埠頭・瑞穂埠頭(ノース・ピア)エリアも、同じような構想でメガリージョン候補地になると思う。

 新型コロナ禍は政府が全国一律に対処することができなくなり、都道府県単位で臨機応変に対応できる知事のほうが、菅首相や西村康稔経済再生・新型コロナ対策担当相、田村憲久厚生労働相より影響力を発揮している。これを奇貨として統治機構を変革しなければこの国の未来はない、と国会議員は肝に銘じるべきである。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『日本の論点2021~22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』等、著書多数。

※週刊ポスト2021年4月9日号

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