中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

知人におカネを貸したら次々踏み倒された!それでも「貸してよかった」唯一の体験

あの時の40万円が今に繋がっていると思えば

「親に借りればいいじゃん」なんて言っても、「親との関係は良くないんで……」などと言ってくる。結局、カネを返さなかった人間との縁は後に切れます。だから、カネを貸してはいけないのです。その人との縁を維持したいのであれば、カネを貸してはいけないのです。

「なんとか働け」「自己破産しろ」「オレ以外のところから借りろ」と突き放し、そこでその人ががんばろうとするなら、「カネ以外の面では応援してやるし、一緒に飲む時はオレが出してやる」と言う。

 こういったやり方でいいのではないでしょうか。ちなみにこれまで貸してきたカネですが、印象深いのが「DV彼氏から夜逃げするための引っ越し代」です。ある日、20代後半の女性・Aさんが「ちょっと会ってください……」と電話をかけてきました。このままだと自分の人生が破滅するから夜逃げをしたい、と言います。

 しかし、引っ越し業者に払うお金も新しい家を借りるための初期費用もない。これはさすがに気の毒で、その場でATMに行って40万円をおろし、彼女に渡しました。月6万円の部屋を借りるにしても、敷金・礼金・初月の家賃を考えると30万円は必要です。そして引っ越し代も数万円はかかる。

 彼女はそれから毎月2万円ずつきちんと振り込んでくれ、20か月後には全額返済してくれました。正直、私は「返ってこなくてもいい」と思っていました。何しろ彼女の精神的苦痛を考えると、自殺してしまいかねない状況でしたから。

 結果的にDV彼氏も改心したようで、今はこの2人は幸せな家庭を築いています。あの時の40万円を貸したことが現在につながっているのであればむしろ嬉しい。他の8件の借金はいずれもほろ苦い思い出ですが、この件だけはカネを貸してよかったと心から思います。ただ、今後絶対に人にカネは貸しません。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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