田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の配車アプリ「滴滴」配信停止措置から見える米中両国の意地

 もともと、中国民営企業のアメリカ上場は欧米の投資銀行がグローバルに運用される法律テクニックと称してVIE(Variable Interest Entity)と呼ばれるスキームを用いて、企業リストラを施した上で上場させている。

 ニューヨーク上場にしても、香港上場にしても、上場に際して民営企業は決まって本社を本土以外に置くといった形に改組される。理屈上、上場会社と本土の実質的な事業資産(企業)との関係は直接的な資本関係ではなく、テクニカルな契約などとして処理される。だから、中国政府から本来の管理を受けないで済む。

 こうした形態は、中国政府の関与を懸念する海外投資家に対して中国企業の株を販売するための重要な条件となっている。

 また、中国政府はこれまでグローバリゼーションを進めようとしてきた。欧米系がいうところのグローバルスタンダードの法解釈を受け入れてきたといった経緯がある。アメリカが中国を国際社会から排除しようとするなら、彼らの言うスタンダードを受け入れる必要はない。ならば、「本土企業と同じように管理しよう」ということになる。

 海外上場できなければ、グローバル企業、金融機関、投資家は中国企業を利用して金儲けすることができなくなる。バイデン政権が中国とのデカップリングを進めようとすれば、アメリカも無傷ではいられないのではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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