大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

コンサル会社の入社面接「明日からタンザニア、何を持っていく?」質問の意図

ゼロから答えを導き出す「考える力」をどうやって育むか(イラスト/井川泰年)

ゼロから答えを導き出す「考える力」をどうやって育むか(イラスト/井川泰年)

 最近、「ネット検索で調べるだけで考えない大学生」が問題となっている。経営コンサルタントの大前研一氏は、その背景に「正解」を求める試験を重視してきた日本の学校教育に問題がある、と指摘する。それではゼロから答えを導き出す「考える力」をどうやって磨けばよいのか。大前氏が解説する。

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 前号(週刊ポスト2021年8月20日号)では、文部科学省が2025年以降の大学入学共通テストで予定していた国語・数学の「記述式問題」導入と英語の「民間試験」活用を断念する見通しとなったことを受け、私が学長を務めているBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学が実施している文科省とは全く違う入学試験のやり方を説明した。

 それは、まず三つのテーマ(自己PRや志望動機など)について1200字程度の小論文を書いてもらい、それに基づき、教員が個別に1時間以上かけて質疑応答を行なう。次に、誰も答えを知らない問題を課して議論し、思考力を確認していく。そういう手間暇をかけているのは、人間にとって最も重要な能力は「考える力」だと思うからである。

 面接で相手の「考える力」を見極める方法は、マッキンゼー時代の入社試験でも導入していた。たとえば「明日からコンサルタントとしてタンザニアに派遣されることになった。リュックサック1個しか持っていけない場合、何を詰め込んでいくか?」という質問をする。

 それに対し、従来の知識詰め込み型の受験勉強しかやってこなかった人間は、タンザニアの場所や気候、経済事情などがわからなかったら、頭がフリーズして答えを出すことができない。

 一方、「考える力」があって機転が利く人間は「タンザニアについて詳しくはわかりませんが、仮にアフリカ中部にある発展途上国だとすれば……」と、まず自分で前提条件を提示し、それに基づいて「私はこんなものを持っていきます」と答える。そのように筋道立てて行動計画や意思決定を説明できる人材を私は採用してきた。

 なぜなら、この試験で問うているのは「正解」ではなく、「こういう前提なら、私はこのように考える」と思考のロジックを組み立て、それに基づいて自分なりの答えを導き出せるかどうか、ということだからである。そういう方法で答えを見つけられる人間が、コンサルタントに向いているのだ。

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