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日本で巨額の利益を上げるAmazonの納税実態は?“デジタル課税後進国”日本の課題

シアトルにある米アマゾン本社に併設されるガラス張りのドーム(写真/AFLO)

シアトルにある米アマゾン本社に併設されるガラス張りのドーム(写真/AFLO)

G20で合意されたデジタル課税の国際ルール

 デジタル課税を取り巻く状況は、刻一刻と変わりつつあるが、日本でプラットフォーマーへの課税が一筋縄ではいかない事例は、アマゾンに限った話ではない。動画配信サービスで急成長しているネットフリックスは2015年に日本市場に参入、コロナ禍でも順調に会員数を伸ばし、2020年8月には有料会員数が500万人を超えたと発表している。そんなネットフリックスの日本法人も、今年3月、2019年12月期までの3年間で計約12億円の申告漏れを東京国税局に指摘され、修正申告したことが明らかになっている。

 報道によると、ネットフリックス日本法人から譲渡された配信権を利用して、同社のオランダ法人が日本で配信サービスを手掛け、巨額の利益を上げていたが、日本法人がその業務に見合った利益を受け取っていなかったと判断されたという。

 このように、日本でビジネス展開して大きな収益を上げているにもかかわらず、それに見合った法人税が日本に納税されていないと見なされるケースは、今後も出てくるのではないだろうか。

 世界的にデジタル課税のルール化は急ピッチで進んでいる。昨年7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でデジタル課税に関する国際的なルールが合意され、売上規模200億ユーロ(約2.6兆円)で利益率10%超の大規模多国籍企業は、10%を超える超過利益の25%を売り上げに応じて市場国に配分するということが決まった。この合意は、巨大プラットフォーマーの事業戦略にとっても大きな転換点となるかもしれない。

 一方で、日本は租税回避という一般的な問題へのルール作りの面で、他国に大きく後れを取っている。前出・森信氏が警鐘を鳴らす。

「違法な『脱税』と適法な『節税』の間にある『租税回避』は、いわばグレーゾーン。欧米ではグレーゾーンの租税回避についてやりすぎるとアウトという基準が示されて対応が進んできたが、日本にはそれがない。グレーゾーンとはいえ、どこまでが許されてどこからがアウトなのか、その基準を法律で明確化しておく必要がある。

 確かに、これまでグレーな税金逃れについて国税当局が指摘してきたが、それはあくまで解釈・運用という形で、そのつど指摘してきたもの。いわば“イタチの追いかけっこ”を繰り返してきたわけだが、それではせっかくデジタル課税でG20で大筋合意できて国際ルールが整備されても対応は十分とは言えない。国際的な租税回避について今のうちに日本でも明確なルールを整備しておかないと、国際ルールができたからといって安心できないのではないか」

 日本は、デジタル課税の“後進国”の地位にある。税負担の公平性の観点からも、日本におけるデジタル課税へのルール整備は急務の課題だろう。

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