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「18才の孫」の養育を親が放棄したら祖父母が面倒をみる必要はあるか? 弁護士が解説

【回答】
 親は未成年の子供の親権を持ち、その一環として扶養する義務を負っています。離婚や、子供への虐待等による停止・喪失で親権を失うケースはありますが、勝手に放棄できません。それだけに、扶養義務を怠ると、場合によっては保護責任者遺棄罪等に問われます。

 両親や祖父母、子供や孫、ひ孫などの直系血族および兄弟姉妹も互いに扶養する義務を負います。扶養の程度・方法について当事者同士の話し合いで合意できないときは、一切の事情を考慮して家庭裁判所が決めるとされています。

 扶養義務者の1人がほかの扶養者に代わって必要なお金を立て替えたときは、ほかの扶養義務者に全部、または一部を請求できる可能性があります。これも、当事者同士で折り合いがつかなければ、一切の事情を考慮して家庭裁判所が決めるとされています。

 つまり、「一切の事情を考慮」するため、扶養料などが単純な頭割りになるわけではありません。例えば、当事者が3人いたとして、そのうちの1人が扶養料600万円を立て替えたとした場合、ほかの2人に対して均等に200万円ずつ請求できるとは限らないのです。極端な話、1人がお金持ちでほか2人が貧乏というケースだと、金持ち1人にすべての負担を求められることもあり得ます。

 今回の場合、お孫さんはすでに18才と成人しており、Sさんに親権に基づく扶養義務は生じません。もちろん祖父母にも親権に基づく扶養義務はないのですが、直系血族としての扶養義務がありますので、現在浪人中で自活できる状態になく、父親の支援が期待できないのであれば、あなたがたが面倒をみる必要性が出てくるかもしれません。お孫さん自身が奮起して自立を目指すのであれば、奨学金を受けたり、住み込みでアルバイトをしながら生計を立てるという選択もあります。

 次に、あなたがたが立て替えた扶養料については、たとえ口約束でもSさんが支払いに合意したのであれば、通常の金銭の貸し借りと同じように全額を請求できます。もっとも口約束ですので、Sさんは発言したことを否定するかもしれません。その場合は一切の事情を考慮して家庭裁判所に決めてもらうことになります。

 娘さんの遺産がSさんの手元に残っていれば全部、または相当部分を支払ってもらえますが、すでに使い切ってしまった後で、Sさんの収入も多くないという場合は難しい。ない袖は振れません。

 なお、大きな財産を管理する方法として、民事信託(家族信託)という方法もあります(後述)。費用はかかりますが、お孫さんから遺産の管理を弁護士・司法書士・信託銀行などに委託する方法で、Sさんは勝手に遺産を処分できません。

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