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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

鉄道を地方創生の起爆剤に 「赤字ローカル線」が廃線を決断する前にやるべき改革

地方の「赤字路線」をどう立て直すか(イラスト/井川泰年)

地方の「赤字路線」をどう立て直すか(イラスト/井川泰年)

 長引くコロナ禍の影響で鉄道業界は苦境に立たされている。利用客が減少する「赤字ローカル線」問題について、解決の糸口が見えていない。少子高齢化に拍車がかかる地方で、ローカル線の運営にどう活路を見出せばよいだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が、海外の事例を参考にローカル線のイノベーションプランを提言する。

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 新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていた新たな旅行需要喚起策「全国旅行支援」のスタートを歓迎する声が高まっている。とくに乗客数の減少が続く鉄道事業の期待は大きい。

 4月にJR西日本、7月にJR東日本が、輸送密度(1kmあたりの1日の平均乗客数)が2000人未満の在来線の路線別・区間別の収支を初めて公表した。それによると、JR西日本は対象となった17路線30区間がすべて赤字で、2017~2019年度の営業赤字が年間平均で約248億円だった。JR東日本も対象となった35路線の66区間すべてが2019年度は営業赤字で、赤字額の合計は年間693億円だった。

 国土交通省によれば、廃線の基準となる輸送密度4000人を割り込んだJR路線は57%(2020年度)に達している。JR西日本は「輸送密度が2000人未満の線区は(中略)このままの形で維持していくことは非常に難しい」という。だが、そういう路線も含めて全体では黒字となるような配分をしてきたはずで、赤字部分だけ削らせろ、という議論には抵抗がある。

 たしかに少子高齢化による人口減少と新型コロナ禍の長期化で乗客の減少が続いているため、赤字ローカル線の存続はますます先行き不透明になり、廃線が取り沙汰されている線区も少なくない。だが、これまで廃線になって路線バスに転換された場合、鉄道時代よりも不便になることが多い。

 となれば、その前にやるべきことがあるはずだ。まずは乗車区間の営業キロなどで規定している運賃を、通勤・通学の定期券や沿線在住の高齢者などを除き、もっと高くすればよいと思う。観光客や鉄道マニアなどに人気の路線は、運賃を2倍、3倍にするのだ。無料乗車券を発行して「ふるさと納税」の対象にする、という手もあるだろう。

 それが可能だと思うのは、たとえば姫川と高瀬川の美しい渓谷沿いを走る大糸線(松本~糸魚川)、絶景の秘境路線として有名な只見線(会津若松~小出)、「森と水とロマンの鉄道」という愛称が付いている磐越西線(郡山~新津)、瀬戸内海と宇和海の景観が楽しめる予讃線(高松~宇和島)、北海道の大地をオホーツク海まで走り抜ける宗谷本線(旭川~稚内)、SL(蒸気機関車)や「きかんしゃトーマス号」「きかんしゃトビー号」を走らせて人気を集めている大井川鐵道(金谷~千頭)などである。

 これらの路線では特別列車を運行したり、弁当やノベルティを付けたりしているようだが、もっと斬新なアイデアが必要である。

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