快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

フォルクスワーゲン「ID.4」試乗ルポ はたして「BEV時代のゴルフ」となり得るのか

センターのインフォメーションモニターの方がメーターパネルより大きく、新鮮さを感じるインパネ

センターのインフォメーションモニターの方がメーターパネルより大きく、新鮮さを感じるインパネ

 ドアを開けると、今度はダッシュボードのデザインにハッとさせられます。これまでの感覚で言えばメーターとナビゲーションの位置にある2個のモニターにすぐ目が行きました。注目はドライバーの正面にある小さなモニターと、さらにその画面右横に申し訳なさそうに付いているシフトのセレクトダイヤルです。この景色だけでも近未来感を感じることができます。こうしたデザイン面においては、ガソリン車の時代を引きずっている感じのある日本のBEVにはないデザインセンスだと思います。実際に使ってみても画面は小さくとも、必要な情報を瞬時に入手できるし、まったく不便はありませんでした。

 ちなみに小さなシフトダイヤルは前方に回すとDあるいはBレンジ、後方に回すとRレンジをセレクトでき、その脇には押込式のPボタンというしつらえで、使いにくさもありませんでした。変速機を必要としないモーターというパワーソースだからこそ、新しい操作性が可能になったのですから、こうした未来感あるレイアウトは当然であり、新たな魅力にもなるのです。

冷静に考えるべきBEVシフトの進め方

 その上で気になる充電インフラをチェックしてみました。日本のCHAdeMO(チャデモ)とは別に、アウディとポルシェのチャージアライアンスにVWも加わり、90~150kW級の出力という、急速充電ネットワークが利用可能です。単純に考えれば、これまで30分かかっていた充電量が、15分以下で可能になるということです。BEV普及の大きな足かせとも言える充電時間問題は、これで少し解消されます。この他にも走行中や停止時、そして主電源のスイッチのオンオフなどで聞こえてくる各種の電子音も、未来的で心地いいなど、新しいBEVの魅力探しが始まりました。

 そしてトータルでの出来映えの良さに感心しながらも「これがBEV時代のゴルフか?」と聞かれると、あの初めてゴルフに触れたときのような衝撃は受けなかったのです。確かに出来はいいが「新世代のゴルフ誕生」と宣言できるほどの感激や驚きはありません。

 こうした中で欧州委員会はCO2削減のため、2035年には内燃機関車の販売を事実上禁止することを可決した現実は厳然として生きていて、世界中はそこに向けて動いています。この「待ったなし」の流れの中で、私たちも今後、車に対する評価軸を少し考え直しながら、BEV時代へのシフトを冷静に進めるべきだと改めて考えさせられた試乗でした。

【ID.4プロ ローンチエディション】
全長×全幅×全高=4,585×1,850×1,640mm
最小回転半径:5.4m
最低地上高:未公表
車重:2,140kg
トランスミッション:1段固定式
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:150kW(204PS)/4,621-8,000rpm
最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,621rpm
一充電走行距離:561km(WLTCモード)
価格:636万5000円~(税込み)

【プロフィール】
佐藤篤司(さとう・あつし)/自動車ライター。男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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