1869年に開通した大陸横断鉄道。中国人労働者は「クーリー」と呼ばれ、過酷な建設に従事した(dpa/時事通信フォト)
国政選挙だけでなく、最近は地方選でも争点の一つとして取り上げられるケースが増えた「外国人問題」。昨年、日本で生まれた子供の数(外国人を含む)は前年比2.1%減の70万5809人と、10年連続で過去最小を更新(厚労省「人口動態統計」速報値)したが、国内の外国人人口は約395万人(昨年6月末時点)と過去最高を記録。過去3年間は年間30万人以上増加しており、外国人比率は年々高まっている。
政府では外国人による土地取得の規制が検討され始め、地方においても外国出身者への様々な対応が急務となるなか、近著『危機管理の日本史』で、日本の歴史をリスクマネジメントの観点から解き明かした歴史作家の島崎晋氏は、日本が直面する近い将来を考えるうえで「移民国家アメリカの歴史を知っておくことは重要だ」と指摘する。以下、島崎氏がアメリカの移民政策の歴史を紐解いていく。【前後編の前編】
アメリカで続いてきた「ワスプ優位の社会構造」
今年2月に行われた衆院選でも「外国人問題」が引き続き俎上にあげられた。結果は高市早苗・首相を擁する自民党の圧勝に終わり、その高市政権は外国人の出入国や在留資格について「管理厳格化」の方針を掲げている。人手不足の分野で外国人に最長5年の在留資格を認める「特定技能1号」について、政府は外食産業への受け入れを4月13日付で原則停止した。受け入れ数の上限(全体で80万人のうち外食は5万人)に近く達することが理由だが、すでに人口減少と労働力不足の始まっている日本はこうした外国人問題にどう取り組むべきなのか。
日本社会の様々な場面で外国人の存在が求められる一方で、SNSでは彼らに対する不快感や危機感をあらわにしたヘイトやフェイク混じりの言説が毎日のように飛び交う現実もある。ここで言う外国人問題は移民問題と言い換えても問題なく、日本が直面する近い将来を占ううえで、知っておきたいのが「移民国家アメリカ」の歴史であろう。
アメリカはワスプ(WASP)の国と言われてきた。ワスプとは「White」「Angro-Saxon」「Protestant」の頭文字をとった略称で、初期移民の大半がイングランド出身のアングロ・サクソン系白人にしてプロテスタントの信者だったことに由来する。それに加え、イングランド以外のイギリス本土出身者、北欧やドイツ、オランダなどからのアングロ・サクソンでないプロテスタント、アイルランドやイタリア、ポーランドなどからのカトリック、バルカン半島からの東方正教会の信者、ロシア・東欧からのユダヤ人などに門戸が解放されても、ワスプがアメリカ社会の上位から中位を占める構造は変わらなかった。
現在、ワスプは白人系エリートを広く指す言葉としても使われており、アメリカ歴代大統領の中でワスプでないのがジョン・F・ケネディ(アイルランド系カトリック)とバラク・オバマ(黒人系)ら数人しかいないのも、ワスプ優位の社会構造を遠因とするのではないか。
