人気住宅地の世田谷区でも、駅によって中古マンションの価格水準や評価には違いがある(写真:イメージマート)
長らく上昇基調が続いてきた東京の中古マンション市場に、変化が表われている。不動産調査会社・東京カンテイによると、東京都の8月の中古マンション売り出し平均価格(70平米換算)は1億1274万円となり、28か月ぶりに下落した。価格上昇が続く局面が転換点を迎えるなか、エリアごとの価格や売れ行きの差にも目を向ける必要がある。
そうした市場の変化を読み解く指標のひとつとして、マネーポストWEBが着目したのが中古マンションの“売れ行き”だ。不動産ビッグデータをAI解析するエステートテクノロジーズの協力のもと、売り出しから成約までの「販売日数」を首都圏の駅ごとに算出。前年と比較して販売期間が長期化した割合を「悪化率」として、独自の「危ない駅」ランキングを作成した。
「世田谷ブランド」の異変
その100位以内に、世田谷区から6駅がランクインした。昔から世田谷区といえば、落ち着いた高級住宅街のイメージがある。しかし、年間200件以上の物件を取材し、全国の住宅事情に精通する住宅評論家・櫻井幸雄氏によると、かつてほど「世田谷ブランド」の存在感は強くなく、住宅地としての人気にも陰りがみられるという。“憧れの街”として知られてきた世田谷区で、なぜ中古マンションの販売期間が長期化しているのか。櫻井氏がその背景を詳しく解説する。
「『世田谷ナンバー』という車のご当地ナンバーが登場した時(2014年)、世田谷区に住んでいる人がメディアのインタビューで『こんなナンバーをつけていたらお金持ちだと思われて狙われるかもしれない』といったコメントをしていたことを覚えています。世田谷区というのは昔から東京の高級住宅地というイメージがあり、住んでいることに一種のプライドを持つ人もいるのではないかと思います。
ただ、2000年代初頭くらいから、住む場所としての人気は落ちてきたように見受けられます。もともと物件の相場が高いことに加え、一番のネックとなったのは、やはり電車の混雑でしょう」(以下、「」内は櫻井氏のコメント)
小田急線、京王線、東急田園都市線といった世田谷区を走る路線では、朝の通勤時間帯の混雑が長年の課題とされてきた。櫻井氏は、こうした通勤時の負担も、住宅地としての人気に影響した一因ではないかとみている。
「世田谷区内の駅の多くは、新幹線の停車駅や羽田空港までのアクセスも良いとはいえず、出張の機会が多いサラリーマンにとっては好ましくない。そういう意味では、湾岸エリアや品川エリアが人気を集めるようになったのは、新幹線の停車駅や羽田空港にアクセスしやすいことも大きいのではないかと思います。今の時代は利便性を重視して住む場所を選ぶ人が多いですからね」
ただ、同じ世田谷区のなかでも「狙い目」のエリアは残っているという。
小田急線沿線のなかでも…
【プロフィール】
櫻井幸雄(さくらい・ゆきお)/1954年生まれ。住宅情報誌の記者を経て独立。年間200件以上の物件を取材し、首都圏だけでなく、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国の住宅事情に精通する。『不動産の法則 誰も言わなかった買い方、売り方の極意』(ダイヤモンド社)など多数の著書がある。
Xアカウント:https://x.com/sakuraiyukio
取材・文/剣慧人
