「富裕層は非公開物件でなければ買わない」は本当か?(写真:イメージマート)
高級中古マンションの売買では様々な「都市伝説」が存在するが、その中に「富裕層は“非公開物件”しか買わない」というものがある。果たしてこれは正しいのか。JPモルガン証券出身で、現在都心の高級中古マンションに特化した不動産仲介会社・I-House代表取締役社長の石黒雅規氏が明かす「非公開物件」の実態とは──。石黒氏の著書『都心の高級マンションを最高値で売却する技術』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋・再構成して紹介する。【都心の高級マンションの賢い「買い方・売り方」・全3回の第1回】
「非公開」「限定公開」物件の背景は
不動産業界では、「非公開物件」という言葉がよく使われます。「まだポータルサイトに出ていない物件があります」「会員限定の非公開物件をご紹介できます」。こうした表現は、買主にとって非常に魅力的に聞こえます。売主にとっても、「自分の物件を非公開で売れるなら、希少性が高く見えるのではないか」と感じるかもしれません。特に高級マンションの世界では、「富裕層は非公開物件しか買わない」「本当によい物件は表に出ない」と語られることがあります。
非公開で販売すること自体を否定するものではありません。売主が近隣に知られずに売却したい場合、相続や離婚、法人の資産売却などの事情から情報管理を重視したい場合、特定の富裕層や投資家だけに水面下で情報を届けたい場合など、非公開または限定公開の戦略が有効に機能するケースはあります。
非公開販売は不動産会社側のメリットが大きい
しかし、「富裕層は非公開物件でなければ買わない」と考えるのは、実態とはかなり異なります。私の実務経験上、富裕層であっても、マンションのグレード、立地、広さ、間取り、眺望、管理状態、価格、将来の資産性などを総合的に判断して購入する方が大半です。公開物件か非公開物件かという点は、判断材料のひとつになりますが、それ自体が購入判断の決定的な条件になるケースは多くありません。実際、私自身も5億円を超える公開物件を多数販売してきましたが、そのなかで「非公開物件でなければ買わない」と言われた経験は、ほとんどありません。
なぜ不動産業界では「非公開物件」という言葉がこれほど強調されるのでしょうか。その理由のひとつは、非公開物件が不動産会社にとって非常に使いやすい営業トークになるからです。「この物件は、弊社でしか扱っていません」「特別にご紹介します」。こうした言葉は、買主に対して強い希少性を演出できます。買主は「自分だけが特別な情報を得ている」と感じやすくなり、検討の優先度も上がることがあります。
