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「入所前の自分に戻っていないか?」 現役刑務官が受刑者たちに日々言い聞かせる言葉

刑務官の一日(昼夜間勤務の場合)

刑務官の一日(昼夜間勤務の場合)

青柳さん:「それはよくない」と言っても、「うるせえ」「黙れ」と聞く耳を持たない。本人は入所前の自分に戻っていると気づいていないんですよ。だから、「昔のあなたに戻っているよ。そのまま出所したら(例えば懲役3年として)ここで3年過ごした時間は無駄だよ。人生の浪費だよ」と刑務官は伝えます。そして釈放のときにも「入所する前の自分に戻ってないか、意識し続けなさい」と言い聞かせます。

オバ記者:見送るときはどんな気持ちなんですか?

青柳さん:「この人はもう大丈夫だ」と思う場合もありますし、「戻ってこないといいな」と祈るような気持ちだったり。残念ながら「また来そうだな」とあきらめにも似た感情で送り出すときもありますが、いつも、これからはまっとうに生きてほしいと願っています。罪は償ったんだから誰にも迷惑をかけず、暮らしてほしいです。

オバ記者:人の数だけ人の歩みがあるんですね。いつも毅然としたブレない気持ち、緊張感を保つのは大変なことですね。

青柳さん:ぼくらがしっかり仕事をしないと国の治安は崩壊します。先輩から教えられたんですが、警察官が犯人を捕まえて、裁判官が刑を宣告しても、刑務官が身柄を逃がしたら意味がない。「なんでそんなにきつい勤務を続けられるんですか?」って問われたら、そういう仕事を任された公務員だから、と私は答えます。

(了。前編から読む

●喜連川社会復帰促進センター
 定員は男性受刑者が1906名、女性受刑者が50名の1956名。刑期8年未満の受刑者を主に収容。施設敷地面積は425.891平米(東京ドーム約9個分)。職員は397名(支所を含む)。2021年末のデータによると、受刑者の罪状は、窃盗約30%、詐欺約21%、薬物事犯約12%、傷害約3%、強盗約3%、その他、交通事犯者や性犯など。

【プロフィール】
オバ記者こと野原広子(65才)/空中ブランコ、富士登山など体験取材を得意とする。

撮影/浅野剛

※女性セブン2023年3月23日号

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