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異次元の少子化対策でかえって出生数減が進む?「令和の大愚策」と評される理由

出産期の日本人女性の人数は25年後には25%減少する見込み

出産期の日本人女性の人数は25年後には25%現象する見込み

25年後には出産期女性が25%減

 25~39歳の日本人女性数は今後さらに減っていく。2022年10月1日現在は929万人だが、25年後にこの年齢に達する0~14歳は695 万9000人なので25.1%少ない。このため国立社会保障・人口問題研究所(社人研)も、推計を行っている2120年までは出生数は減り続けるとしている。

 ただでさえ政策効果が見込めないのに、莫大な予算を投じることによってむしろ少子化が加速したとなったのでは目も当てられない。

 そもそも「異次元の少子化対策」は岸田文雄首相が唐突に打ち出したものだ。議論の時間が乏しく、当初から迷走が懸念されていた。このまま「無理が通れば道理が引っ込む」といったような状況を許せば、後世の人々から「令和の大愚策」との烙印を押されることとなるだろう。

 政府は6月1日の「こども未来戦略会議」で、財源確保策について当初予定していた骨太の方針ではなく、「年末までに結論」と先延ばしする考えを明らかにしたが、ここは「異次元の少子化対策」自体を一端引く勇気を持つことだ。低所得の子育て世帯に対する家計支援策へと衣替えするのが賢明な判断である。

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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