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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

なぜ「タワマン記事」は注目を集めるのか? タワマン住民の嘆きを見て溜飲を下げる非居住者たちのメシウマ心理

タワマンが注目を集めるのはなぜか?(写真:イメージマート)

タワマンが注目を集めるのはなぜか?(写真:イメージマート)

 ネットニュースでよく注目を集めるテーマとして「タワーマンション」がある。タワマン記事のコメント欄は盛況だ。「勝ち組の象徴」としてのタワマン住民が「こんなはずじゃ……」と嘆くような記事に対しては、それを嘲笑するようなコメントも目立つ。では、ネットニュースのタワマンをめぐる論調は、これまでどう変化してきたのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、実際にタワマンを所有する知人の声と合わせて紹介する。

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 タワマンネタで最近話題になったのは、東京・渋谷の地上39階・143メートルのタワマン近くに150メートル級の“モンスターマンション”の建設計画が持ち上がっている件ですね。現代ビジネスでは、自慢の眺望が失われることや、それらに伴い資産価値が1億円以上下がる、といったタワマン住民の嘆きの声が紹介されていました。

 これに対するネットの声を見ると、多くは嘲笑するようなものでした。「自分のところだけが高いビルでいられると思うなよ。周りにも建つことを想定しとけよ」「お前らだって建てる時、周囲の日照権を侵害しただろ」的な意見が代表格でしょう。いずれにしても、「我が世の春」を謳歌し、肩で風を切る(イメージがある)タワマン住民が思い通りの人生を送れない状況がメシウマ状態(他人の不幸でメシがうまい)になっているのです。私も以前、「タワマン40階の部屋にもゴキブリはやってくる」という記事を書いたら「ざまぁみろ」的感想が多数書き込まれました。

『限界のタワーマンション』(榊淳司・集英社新書、2019年刊)によると、タワマン第1号は1976年に埼玉県与野市に建てられた「与野ハウス」だといいます。しかし、実質的には2000年頃から本格化したそうです。2003年開業の六本木ヒルズに連なるレジデンス棟が象徴的ですね。その頃から東京都心部や湾岸部のタワマン建設ラッシュが始まり、武蔵小杉や大阪でもタワマンは建設されました。

 プチ成功者達はタワマンの新居に家具を搬入する様子や、ガラス窓の外に見える絶景、さらには東京湾花火大会の様子を撮影し、フェイスブックにアップ。多数の「いいね」が付き、「花火、楽しかったです! さすがは42階からの眺望、堪能しました! 来年もお邪魔させてください!」といったコメントが付き、タワマンオーナーは自尊心が満たされるのです。

 こうした光景に嫌気がさしたのか、2010年代中盤頃かネット上ではタワマン住民を揶揄する意見が多数書き込まれるようになります。しかし、住民からすれば「負け犬の遠吠え」としか見えない。

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