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なぜ「タワマン記事」は注目を集めるのか? タワマン住民の嘆きを見て溜飲を下げる非居住者たちのメシウマ心理

武蔵小杉では台風の影響で停電や冠水したマンションも(2019年10月。時事通信フォト)

武蔵小杉では台風の影響で停電や冠水したマンションも(2019年10月。時事通信フォト)

タワマン住民の嘆きを読んで溜飲を下げる非タワマン居住者

 そうこうするうちに、「高層階住民によるマウンティングでタワマン購入を後悔する低層階住民」的記事が人気を博すようになります。これら記事の特徴は、タワマン住人同士の軋轢を煽るもの。

わかりやすい構成は、高層階に住む会社社長や開業医ら大金持ちに対し、共働きの“そこそこ裕福”な低層階住民が「眺望」「年収」「食事」「自家用車」「子供の習い事」「旅行のレベル」などで、ことごとく劣等感を抱かされるというもの。そして「タワマンなんか住むんじゃなかった」といった嘆きに繋がる。これを見て非タワマン居住者は「ざまみろw」と溜飲を下げるのです。

 そんな非タワマン居住者達の溜飲が下がりまくったのが、2019年10月、台風で多摩川の水が地下3階の電気設備に入り、一時的に停電・断水となり、トイレで用さえ足せない状況になった川崎・武蔵小杉のタワマン騒動です。マンション前には悪臭を放つ汚泥が溜まるなどと報じられたことから、ネットでは「うんこマンション」と揶揄されることもありました。

 前出・榊氏の『限界のタワーマンション』ではこれでもか、とばかりにタワマンのネガティブな点が描かれています。

・武蔵小杉の場合、部屋を出てから駅に着くまで30分かかる
・15年おきの修繕費が膨大な金額になる。その15年後にはさらに費用が上がる
・救急車を呼んでも到着に時間がかかる
・高層階では、三半規管が弱い人は健康被害を招く可能性あり
・壁が薄い
・2037年には多くのタワマンが廃墟になる恐れ

 同書では、タワマン的高層マンションはイギリスでは低所得者向けの集合住宅である、と指摘。さらにはこんな記述もあります。同氏は元々住宅の広告・販売戦略立案に携わる仕事をしていました。

〈私がかつて新築マンションの分譲広告を制作していた時、ある財閥系大手デベロッパーが社内向けに制作した販売企画資料の中に「湾岸のタワーマンション購入者は基本的に見栄っ張り」と、明確に書かれていたのを覚えている。売主からして、湾岸エリアで販売するタワーマンションのターゲット層が見栄っ張りであると理解した上で、彼らの購入マインドを刺激する広告デザインや販売センターでの演出を行っているのだ。〉

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