ジャンパースカートの丈を半分に、スカート部分は4分割にして組み直し、華やかなドレスに(写真提供/加藤登紀子事務所)
糸をほどく忍耐力が人間関係にも通じる
リメークを始めて5年。技術力は向上し、当初はできなかったファスナー付けもこなせるようになった。
「きつくなったジャケットは、後ろ身頃の中央を縦に切り、そこに別の布を挟んで縫ってゆったり着られるようにしたり、流行遅れのワンピースは上下を切り離して、別の布と組み合わせてリメークしたり。積み木を積み上げては崩すような遊び感覚で楽しみながら作り変えています」
加藤さんの部屋には作りかけの服が常に何着かあり、時間を見つけては、少しずつ縫い進めているという。
「縫い物は、疲れているときにするほど無心になれて安らぎを感じられるし、区切りのよい箇所まで縫うと、達成感が得られます」
リメークを通して学ぶことが多いのも、夢中になった理由のひとつだ。
「たとえば絡んだ糸をほぐすには、ヒステリックに引っ張ってはダメ。根気よく糸を緩めながらほどいていく──人間関係にも通じる点があって、糸をほどきながら、精神力や忍耐力が鍛えられています。それに糸通しの際、針穴を見続けていたら、目の周辺の筋肉が鍛えられたのか、老眼が治った気がするの(笑い)」
自分の手で生まれ変わった思い出の服を着られるのもリメークの醍醐味だ。
【プロフィール】
加藤登紀子(かとう・ときこ)/1943年、ハルビン市(中国)生まれ。東京大学在学中に歌手デビュー。1971年、『知床旅情』で日本レコード大賞歌唱賞受賞。2025年5月、歌手活動60周年の記念企画アルバム『for peace』をリリース。
※女性セブン2025年8月21・28日号
「縫い物は、疲れているときにするほど無心になれて安らぎを感じられるし、区切りのよい箇所まで縫うと、達成感が得られます」(写真提供/加藤登紀子事務所)