ため息交じりの大盛りランチ
ランチはこの値段からは想像できないほどボリューム抜群!
私たちの隣席は、30歳前後くらいの大柄な男性と、やはり体つきのしっかりした私と同年代と思しき男性の、2人連れだ。青年のほうに運ばれてきたのは、あっと驚く巨大天丼。それ、すっごいですね~~と、昔の所ジョージさんみたいなひと言がこぼれ出た。これには注文したご本人もびっくりされた様子。
そのすぐ後に、年配の男性の前に運ばれてきたのは、揚げ物4点盛りと巨大ライス。ふたたび、すっごいですね~~とため息交じりに呟けば、やはりご本人も驚き、少し照れ笑い。おいおい、こんなに食えるかな、とその表情が語っていた。
なんでも、お仕事の現場がお近くだそうで、どこで昼を食べようか調べていて、ここしかない、と目星をつけてきたんだそうです。さっきからグビグビとビールを飲む私たちを見て、午後からの仕事がなけりゃ、飲むんだがなあ、と思っているに違いないから、どうもすいません、飲んじゃって、と、こちらも照れ笑いを浮かべた次第だ。
ちなみに、揚げ物4点盛りの詳細は、えびフライ、ハムカツ、コロッケ、春巻き。本日のランチのミックスフライ定食である。これにてんこ盛りの大盛りライスで、お値段は900円。青年の巨大えび天丼もちょうど1000円と破格だ。喰う気満々の人は、諸物価高騰のおり、この値段で頑張ってくださる食堂においては、大盛りがお得と、断言したい。
我々の前にはネギ肉イタメが出てきた。このひと皿は、前回訪問時に知ったもので、たいそううまいから、今回も欠かさずに頼んだのだ。ネギ、タマネギ、ピーマン、豚肉の中華炒め。どんぶり飯をもらってこれをおかずとするもいいのだが、ご飯を食べては酒が入らないから、私はここで、ハイボールに切り替えた。角のハイボール。実はこの店、嬉しいことに山崎も置いている。どっちにしようかちょっと迷ったが、ここはいつもの角でいこうと決めた。
ごま油とショウガの風味がきいて、味のほうは、鶏ガラスープと、塩、コショウでしょうか。とても穏やかな味で、盛りもたっぷり、ケンちゃんもとても満足した表情だ。
これをつまみながらの角ハイがうまい。1杯、2杯とお代わりをする。
さっぱりだけどクセになる、絶妙な味付けのネギ肉イタメ
ふと、ケンちゃんの視線の先を見ると、初老の夫婦と、その息子とわかる男性、そこにもうひとり、とてもにこやかに、夫婦に細かく気を配る女性の4人が、一卓を囲んでいた。
「どういうご関係なんすかね」
というケンちゃんの疑問に答えていわく、
「セガレが両親にカノジョを紹介しておるのだな」
「やはり、そう見えますよね。でも、今日が初対面でしょうか」
「にこやかに談笑しつつもどこかにピンと張りつめた空気が感じられる。お付き合いさせていただいております、という日だな」
「食堂でお昼に紹介しますかね」
「堅苦しいレストランで落ち着かない食事をするより、おいしい餃子や焼きそばなどをテーブルに並べたほうがリラックスできる。それには昼間の三ちゃん食堂がいい。そういうことなんだろうなあ。あのセガレ、若いのに、よくわかってる」
ハイボールもすでに3杯目に入り、夜より早くくる昼の酔いに包まれた私は、実にテキトーなことを口にするのだ。