うにだけで何杯も
ついに頼んでしまった大好物の塩うに
「塩うに、ください」
頼まずにはいられなかった。「よし木」の塩うに、昔からの好物なのだ。
箸ですくって、ちょいと舐める。よくある瓶詰のうにと、ちょっと違う。クセがなく、いくらでも舐めていたい。ということはつまり、いくらでも酒が進む、ということもでもある。これは気をつけないといけないのだ。私はただでさえ、酒さえあればつまみは要らぬ傾向の人間であるからして、うにうまし! となると、うにだけで2杯、3杯とやってしまいそうになる。
「一白水成、もうひとつください」
頼んでしまっていた。同時に、ランチ天も頼んだ。ランチタイム限定の天せいろだ。
家の近くに美味い蕎麦屋があるというのは幸せなことだ
少し色のついた蕎麦は香ばしく、歯ごたえもよく、喉越しもすばらしい。天ぷらは、万願寺唐辛子、アスパラガス、レンコン、ミョウガ、ギンナン、シイタケ、エビ、オクラの花、エビなど。塩につけて天ぷらをかじり、冷たい蕎麦をすする。まさに至福のひととき。なぜ私はかくも簡単に至福にたどりついてしまうのか。いつも疑問に思い、いつも答えは出ない。
最後は蕎麦湯でつゆを割り、香りと味を楽しむ。その間にも、残りの酒を口に含めば、ああ、もう1杯追加したいが、おお、そろそろお会計の時刻である。
駅から少し離れた住宅街にある名店だ(「そば処 よし木」東京都府中市分梅町3-2-2 ファミールビレッジ101)
【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』や、最新刊『酒場とコロナ』が好評発売中。


