脳を「臓器」と考える発想の転換
多忙感を解決する第一歩は、発想を転換することです。私はよく、脳を同じ臓器の胃にたとえてお話をします。
よく、「脳は、使えば使うほど能力が上がる」と信じている人がいます。では、この文章の「脳」の部分に「胃」を当てはめてみてください。
「胃は、使えば使うほど能力が上がる」。そんなわけないですよね。食べ過ぎれば、胃が受け付けなかったり、胃もたれしたりしてしまいます。脳も同じで、やたらに働かせればよいというものではありません。
たとえば、カフェでコーヒーを注文するとき。S・M・Lのサイズがあったとして、大抵もっとも「お得」なのは容量あたりの価格が安いLサイズです。でも実際には、多くの人がMサイズを選び、ときにはSサイズを選びます。理由は単純です。「そんなに飲めないから」。つまり人は自然と「臓器の状態(胃の容量)」に基づいて行動を選択しているのです。
では、仕事量を選ぶときはどうでしょうか。
体調が悪いのに「今日もLサイズ(大量のタスク)をこなさなきゃ」と無理をしてしまう。あるいは「できるかもしれない」という理想を優先して、常にLサイズを選んでしまう。
こうして、臓器である脳が処理できないほどのタスクに無理やり対応しようとして、結果として多忙感が膨らんでいくのです。もちろん、脳の調子が悪いからといって仕事をすべて投げ出すわけにはいきません。
しかし、どんなやり方をするか、どんな順番で取り組むかは、選ぶことができます。
たとえば、疲れ切っているときにメール通知が来たとしましょう。脳を臓器として扱うなら、「今メールチェックをすれば何通か来ているだろうけど、集中力が落ちているから明日の集中できる時間にまとめて処理しよう」と判断できます。胃をいたわるように、脳も今の状態に気づいて、いたわることが大切なのです。
この考え方を身につけると、「重要な判断は明日の朝一番に回そう」「午後は集中力が落ちるから、ルーチンワークをまとめて片付けよう」といった、現実的で持続可能な選択ができるようになります。
※菅原洋平・著『多忙感』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成
『多忙感』著者の菅原洋平氏
【プロフィール】
菅原洋平(すがわら・ようへい)/作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集めている。主な著書に、14万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、12万部突破の『すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法』(文響社)など多数。
