老後の自宅売却の落とし穴とは(写真:イメージマート)
老後生活を考えて自宅を売却して住み替えるケースは多いが、「年齢」を鑑みないで安易に選択すると地獄を見る。とりわけ定年退職のタイミングとなる65歳をすぎてからの自宅売却には、多くの落とし穴が潜んでいるという。その一例が賃貸マンションへの住み替えだ。失敗事例から対策を学ぶ。
定年後は支払い能力が不安視される
都内在住の68歳男性は、3年前に郊外の一軒家の持ち家を1500万円で手放し、より便利な都会で暮らそうと都内のコンパクトな賃貸マンションに引っ越した。
年金と貯蓄でやっていけるだろうと思っていたものの、予想以上にお金が減るばかりだという。
「家が売れてまとまったお金を手に入れて気が緩んでしまいました。敷金・礼金、仲介手数料と引っ越し費用のほかに、それまでの家具が大きいため新たに家具を買い揃えてしまい、初期費用だけで100万円以上出ていきました」
子供たちが独立した後、がらんとした自宅を手放して手頃な賃貸マンションに引っ越すケースは少なくない。自宅の売却で得た資金を賃貸に回して暮らすのは一見合理的だが、注意が必要だ。
特に危険なのが、多くの人が定年を迎える「65歳」というタイミングだという。不動産コンサルタントでさくら事務所会長の長嶋修氏が語る。
「65歳をすぎて“家賃がかからない状態を手放すリスク”は大きい。近年の物価高騰でマンションの家賃は上昇しています。管理費や修繕積立金、損害保険などの保険料も上がっており、それらが家賃に上乗せされる傾向が続く可能性が高い。定年後の年金生活のなかで毎月の家賃や管理費を払い続けられるのか、引っ越す前にまずは資産状況を把握することが大切です。
あわせて夫婦のどちらかが先に逝った場合も想定したい。例えば、専業主婦が厚生年金に加入していた夫を亡くすと厚生年金部分が75%程度に減額されることも考慮する必要があります」
知っておきたいのが「家を借りられなくなるリスク」だ。一般に65歳を超えると新たに賃貸住宅を借りようとしても審査で落とされるケースが多くなる。
「定年後の方は支払い能力が不安視され、孤独死のリスクもあるため大家から敬遠されがち。特に都心や若者層に人気のあるエリアは若い借り手がすぐに見つかるのでシニアに貸す必要性が低くなります。毎月の支払いが苦しく、やむなく安い物件に移り住もうとしても借りられる家が見つからないことも十分に考えられます」(長嶋氏)
