人生100年時代、老後資金を賢く使い切ることも考えたい(イメージ)
年金受給、投資、貯蓄──「お金の増やし方」に関する情報があふれるいま、私たちはいったい何才まで、いくらお金を貯め、増やせばいいのだろうか。老後を豊かに、悔いなく過ごすために必要な知識は「増やし方」ではなく「減らし方」ではないのか。老後資金を「上手にゼロにする」使い方を解説する。【前後編の前編】
60代からは明確な額がわからない支出が増えてくる
老後に必要なお金はいくらか。この問いに明確に答えられる人はいないだろう。実際、正解がわかるのは、自分が“最期を迎えた”ときだ。都内に住むAさん(62才)も、答えが出ないまま、毎日を送っている。
「夫と結婚したのは27才、30才で子供を産んで、家を建てて、住宅ローンは来年で完済予定。子供も独立して教育費はかからないし、食費や光熱費もぐんと減りました。ただし、いま再雇用で働いている夫があと2年で無職になり、完全な年金暮らしになります。
ある程度の貯金はあるけれど、老後資金2000万円なんてとても非現実的で、これからは一生、どう節約しながらお金を貯めて老後に備えていくべきか不安で仕方ありません」
たしかに、老後に必要なお金が2000万円とも4000万円ともいわれ、先の見えない物価高の時代に、山下さんのような不安を覚える人は多いだろう。実際、内閣府の「年次経済財政報告」によると、60才以降の金融資産の減り方は鈍化し、高齢者ほどお金を使わないことが明らかになっている。しかし、ファイナンシャルプランナーの内山貴博さんは、その流れに変化を感じていると指摘する。
「10~20年前は“老後が不安だからお金を貯める”方向に目を向ける人がほとんどでしたが、近年は“60才以降は子育ても仕事も卒業して自分たちのためにお金を使いたい”“積極的に上手に取り崩していきたい”という意欲のある人が増えたように思います」
ただし生活環境が大きく変わる60才前後からは、正しいお金の使い方を知っておかなければ損をしたり、不安を抱えることになってしまう。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「大きな違いは収入があるかないか、そして時間的な価値観もそれまでとはまったく異なります。ローンや教育費などの固定費は減りますが、健康維持のための支出や医療・介護といった明確な額がわからない支出が増えてくる。だから多くの人が“貯めておかなければ”と思い込んでしまうんです。
一方、“生きがい支出”といって自分のためにお金と時間を使う人も増えます。これも一概にいくらかかると算出できるものではない。つまり、60才以降はお金を守りながら使っていくということが必要になります。お金を減らすこととは少し違っていて、少しずつ増やしながら生活が困らないように自分のために使う、ということです」
