生姜焼きはタマネギたっぷりなのが嬉しい
これぞ大衆酒場という気風の良さ
私は、豚の生姜焼きが、たいへん好きだ。前回、最後の晩餐に喰いたいのはマーボー豆腐と恥ずかしながら告白したばかりなのだが、実は生姜焼きとどっちなのだと言われたら、困るのだ。生姜焼きが最後の晩餐でもいい。
で、生姜焼きの具だけもらう。丼もので言うアタマのみ。鴨南蛮なら、そば抜きか。タマネギたっぷりの生姜焼が千切りキャベツの上にのっている。そこにズブリと割り箸を差し込んで、豚肉、タマネギ、キャベツをうまくつかんで口へ運ぶ。うまい。実にシンプルで飾らない生姜焼きだ。
「ああ、大ジョッキで出していますね」
ケンちゃんが注目したのは、ビールやサワーなどのジョッキの大きさだ。近くのテーブルのお客さんが頼んだビールは、中ジョッキよりはるかに大きい。1リットルのメガジョッキではなさそうだが、なかなか迫力がある。
レモンサワーなど、各種のサワーは420円なのだが、これをダブル(おそらく中身の焼酎がダブル)にすると200円増し、そして、大ジョッキにすると300円増し、となっている。ちなみに角瓶のハイボールは、普通サイズが480円、ダブルは200円増し、大ジョッキが300円増しだ。あの大きさの大ジョッキハイボールが780円。これは安い。日ごろバーで酒を飲む機会の多い私は、丸大さんの気風の良さにひれ伏したのだ。これぞ、大衆酒場だ。
この角ハイボール大ジョッキは780円
「それ、どこの店?」
私が手にしていたコンパクトカメラの液晶画面を覗き見た隣の男性に声をかけられた。それは、撮ったばかりの生姜焼きとホッピーの写真だった。
「あ、これ、今、撮った写真ですよ」
「ええ? きれいに撮れるんだね」
「ありがとうございます」
男性、私より少し年配だろうか。笑顔がいい人だ。
「よく来られるんですか」
「ええ、来ますよ。私は川崎市民ですから。ずっと、ここです」
市民という一言に、昔の国民酒場、今も横浜に残る市民酒場を連想し、改めて店内をぐるりと見渡すと、市民酒場の流れを汲む酒場に共通の、本物の老舗感が漂っている。

