住まいの「長生きリスク」と対策10(その1)
住まいの「長生きリスク」と対策10(その2)
エレベーターのない中層住宅でのデメリット
また中層住宅(5階建程度)でエレベーターが無い物件の上階に住む人には、日常生活に直結するリスクもあるという。例えば、宅配などの荷物の配送だ。飲料ケースなど重量物の宅配、家具・家電の搬入でフロアが上がるごとに「階段料金」が加算されたり、「配達不可」として注文を受けてもらえないことがある。
また、住人自身が健康状態の悪化などにより階段の昇り降りが苦痛になると、「外出を控えがちになる可能性がある」と山本氏は指摘する。
「最悪なケースは、重い荷物を運ぶのが億劫で買い物を控えたり、通院すら面倒になり、自宅に引きこもって孤立化してしまうことです」
そうした事態に直面し慌てる前に、打つ手はある。選択肢となるのが、同じ建物の「低層階」への転居だ。特に公営住宅では、高齢者の低層階住み替え(階層変更)に柔軟に対応している自治体が多く、条件を満たせば空室発生時に優先案内されることもある。転居費用は自己負担だが、家賃は同額程度で済むため、支出は最小限で済む。また「生活環境が変わらない」メリットも大きい。
一方、老後の新天地への転居を検討中であれば、「気力や体力がある60代半ばまでのタイミングで動くべき」だと山本氏は付け加える。
「立ち退き」を求められたらどうするか
そのほか賃貸住まい特有のリスクとして、老朽化に伴う建て替えなどを理由に「立ち退き」を求められる可能性があることを念頭に置きたい。
「借地借家法において、賃貸人(貸し手)からの解約申し入れは『正当事由』がある場合に最低6か月前にする必要があり、一般的に賃借人には引っ越し代や立ち退き料といった金銭の補償が行なわれます。金額の目安は賃料の6~12か月分と言われますが、法的根拠はないため、個別交渉が必要です」
賃貸人に退居を求められても、すぐに転居先が見つかるとは限らない。金銭的負担、心労も大きい。こうした場合は、希望する転居先の家賃相場、引っ越し費用の見積もりを根拠に相手方に相談し、少しでも好条件を得て退居に踏み切るのが得策だという。
※週刊ポスト2026年6月5・12日号

