十両上位力士たちの奮起
ひとつの取組への懸賞は60本が上限だが、今場所は60本が懸かった一番はなかった。人気力士の大の里や安青錦などが休場した影響したとみられる。唯一、2日目の豊昇龍対藤ノ川の一番に60本が予定されていたが、豊昇龍が休場したことで幻に終わった。26本が取りやめとなり、霧島対義ノ富士(20本)、琴櫻対若隆景(8本)などに振り替えられた。
12日目から大関・琴櫻も休場となり、常に結びの一番で取ることになった大関・霧島戦に懸賞が集中。それでも上限とはならなかった。最多は13日目の琴栄峰戦の58本。50本前後の懸賞が懸かるも、熱海富士や琴勝峰、若隆景など人気力士にも分散した。14日目は結びの霧島対伯乃富士の55本に対し、琴勝峰対熱海富士が58本。千秋楽でも霧島対宇良の51本に対し、熱海富士対欧勝馬が58本だった。
今場所はにしたんクリニックが11日目の幕内19取組に懸賞を5本ずつ懸けるなど、下位力士の取組にも幅広く懸賞が懸けられた。幕尻(東前頭17枚目)の藤凌駕は10勝5敗と健闘し、今場所の獲得懸賞は87本。初日の竜電戦には16本、2日目の若ノ勝には12本の懸賞旗が土俵の周りを回った。11日目まで優勝争いに加わっていた東前頭15枚目の翔猿は9勝6敗で懸賞は68本、12日目まで2敗をキープした東前頭13枚目の琴栄峰は47本。負け越した下位力士でも平均して20~40本を獲得している。
番付下位の取組にも懸賞が懸かることで、簡単に土俵を割らない熱戦が多くなったという。中でも張り切っていたのが十両上位の力士だったと協会関係者は言う。
「十両で好調な力士は幕内に上がって幕尻の力士と対戦し、事実上の“入れ替え戦”をする。一般的に幕内力士のほうが力は上だが、今場所に限っては幕内が1勝9敗と十両の力士に大きく負け越した。理由は懸賞金が大きいでしょう。十両の取組には懸賞が懸からないが、幕内の土俵に上がって勝てば懸賞を手にすることができる。
3日目の藤凌駕対阿武剋に8本、4日目の竜電対大青山に9本、中日の若ノ勝対佐田の海に7本、千秋楽の欧勝海対出羽ノ龍には13本などすべての十両との一番には懸賞がついた。中でも9日目の尊富士対欧勝海には17本が懸かり、尊富士が寄り倒しで勝利して懸賞を手にした。幕内力士が勝ったのは11日目の御嶽海(対出羽山=14本)だけだった」
3563本の懸賞で力士が手にするのは2.1億円超。角界には「土俵にはカネが埋まっている」という言葉が伝わるが、その言葉通りに土俵は充実したのかもしれない。