閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
大竹聡の「昼酒御免!」

【大竹聡の昼酒御免!】「ネグローニ」「山崎」「マンハッタン」新宿三丁目の隠れ家バーで1杯ごとに思いを馳せる雨の日の午後

カクテルは店による違いも楽しみたい

カクテルは店による違いも楽しみたい

ふくよかでやさしいマンハッタン

 さて、このあたりで締めの1杯としようか。ウイスキーをそのまま続けるとして、今度はウイスキーベースのカクテルの王道、マンハッタンを注文する。ベースとなるのは、ライウイスキー。店によって、カナディアンクラブを使ったり、ウッドフォードリザーブなどのバーボンを使うこともある。深澤さんがカクテルを調合する場所は、私の座ったポジションからは少し離れていたし、カウンターには別のお客さんも何人か座っていたので、確かめることはしなかった。

 出てきたマンハッタンを口に含むと、ちょうどいい甘さだ。スイートヴェルモットの種類なのか、量なのか。それとも、ベースのウイスキーを混ぜるなどの工夫があるのか。私などの舌では判断がつきかねるのだが、ふくよかでやさしい味わいに仕上がっていることはわかる。

 この日、マンハッタンが5杯目の酒なのだが、この頃になって調子が出てくるのも、困ったものだ。調子が出てくるというのは、酒がますますうまく感じられる、という意味だ。

 女性バーテンダーの小河原裕花さんにそんなバカ話を聞いてもらう。この方も、酒は好きなようで、江ノ島海岸でバーベキューに興じた後、バーになだれ込んで大いに飲んできた、というような男勝りの話も聞かせてくれる。

 気取りがなく、それでもバーテンダーとしての型をきっちり守る。この店がもっている雰囲気を体現するかのようで、会話も楽しい。

 さて、もう1杯、どうしようか。マンハッタンまでたどり着いた後で、マティーニで締めるのも好きな流れ。でも、ようやく身体が目覚めてきた感じでもあるから、もう少し飲みたい。しかしながら、店は夕方早くからのお客さんで賑わい始めている。あまり長居をするのも気が引ける。そうか、ここはひとまず撤収して、河岸を変えることにしよう。

 外へ出ると、雨が強くなっていた。台風前だよ、早く帰れ――。そう自分に語りかける声が頭の中で聞こえているのだが、一方では飲みたい気分が力強く渦を巻き始めている。なんとも不穏な、雨の日の夕刻なのであった。

隠れ家のような空間で昼から酒と葉巻が楽しめる(「STING」東京都新宿区新宿3-8-2クロスビル3F)

隠れ家のような空間で昼から酒と葉巻が楽しめる(「STING」東京都新宿区新宿3-8-2クロスビル3F)

シリーズつづく第1回から読む

【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』や、最新刊『酒場とコロナ』が好評発売中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。