立派なバックバーは見ているだけで気分が高揚する
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第27回は、翌日には台風襲来も予想された中、しっとりとひとりオーセンティックバーで過ごした。【連載第27回】
午後3時オープン。現在の私に最適の店
まだ6月だというのに台風7号と8号が続けてやってきますと注意喚起されていた金曜日の午後、私は新宿にいた。
日ごろ明け方まで起きている私だが、この日は朝いちばんからサッカーワールドカップ、日本対スウェーデン戦をテレビ観戦した。その後、しばしうたた寝をしたのだけれど、どうにも頭はすっきりしない。このままウダウダしているくらいなら、そうだ、いっそ酒を飲んで元気になるに限る。そう考えてしまう私はやはりどうかしているが、気が付けば最寄りの私鉄駅から特急電車に乗っていた。
揺られること30分。電車は新宿に着いた。さて、どこで、何を飲もうか。時刻は3時前だ。中華でビールもいいし、もつ焼きでレモンサワーというのもいい。あれこれ見て歩きたいが、あいにくの雨だ。本格的な大雨は翌日の土曜日の予報なのだが、金曜の午後も降っていた。そこで地下道を歩いて伊勢丹から地上へ出ると、もうそこは新宿三丁目。桂花ラーメンを通り過ぎる頃には雨脚も強くなってきた。太肉麺でビールもいいなぁ。いやいや、それをやってしまうと、その先の酒が続かない。もともと食が細い私だが、昨今は年齢のせいもあって、いよいよ喰えない。猛烈に腹が減ったので牛丼屋へ飛び込んだはいいものの、牛丼をたっぷり残してしまったのは数年前のこと。いま、太肉麺でビールをいただくならば、満腹になって酒が飲めない状態になるのは目に見えている。
ここでハタと思いついたのが、一軒のバーだ。午後3時オープン。現在の私に最適の店が目と鼻の先にあるではないか。
飲食店がいくつも入っているビルの3階へ行くと、ああ、やってる、やってる。うれしいねえ。店のドアの横には「STING」という文字。この名前、ミュージシャンのスティングからではなく、ロバート・レッドフォード&ポール・ニューマン主演の映画からいただいたものだと聞いたことがある。あの映画、カッコよかったですねえ。若い人は、レッドフォードもポール・ニューマンも知らんのだろうけどね。おじさんたちには、憧れのスターだった。
