遺体処置を素人が行うのは難しい(イメージ)
最近は死亡者数の増加に伴い、地域によっては火葬場が混雑し、火葬までの日数が長期化している。夏場に身内が亡くなり、すぐに火葬できないとなると遺体の状態は大丈夫なのかと不安になる人もいるだろう。では、どのような対策があるのか。葬儀業界における最近の遺体保全事情について、葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏がくわしく解説する。【前後編の前編】
「DIY葬」で恐る恐る遺体にドライアイスを置いてみたが…
横浜市で自営業を営む山下さん(仮名・52歳)の父親が、昨年8月の中旬に亡くなりました。父親は生前「DIY葬」に興味を持っており、山下さんに「自分が死んだときはこれで」と言い残していました。「DIY葬」とは「Do It Yourself(自分で行う)葬儀」の略で、葬儀社の手を借りずに、遺族が自分たちだけで火葬まで行う方法です。山下さんは事前に書籍を読んだり、インターネットで情報を集めたりしていました。
父親は自宅療養中に亡くなったので、かかりつけ医に死亡診断書を書いてもらい、幸い病院から遺体を搬送する手間は避けられました。棺はAmazonで発注しました。火葬場に予約を入れると、最短でも6日待ちという返答です。
横浜市の火葬場が混んでいることは覚悟していましたが、気がかりなのはこれから毎日最高気温35℃前後の日が続くことです。遺体の処置をしたことのない山下さんでも、念入りに遺体を冷やさないとまずいということは理解できます。遺体を安置している部屋のエアコンは、一番低い温度に設定しました。次に、事前に調べておいたドライアイスの販売所へ出向き、10kgを6000円ほどで購入できました。葬儀社の見積り書に書かれたドライアイス代の、半分くらいの金額です。
みようみまねで、布団に横たわる父親の顔の横や体の上に、恐る恐るドライアイスを置いていきます。翌日も販売所でドライアイスを購入した山下さんは、新しいものに交換しようとして愕然とします。父親の顔に当てていたハンカチを外すと、口が2cmほど開いているのです。閉じようとして顎を押すのですが、筋肉が硬直していてうまく閉じません。気のせいか開いた口元から臭気を感じます。耳と、胸の上で組まれた手は、ドライアイスに直接触れていたせいで、氷のようにカチカチに固まっており、赤紫色に変色し始めています。
「やっぱり、葬儀屋さんに頼んだ方がいいんじゃないかね?」
年老いた母に不安そうに言われた山下さんは、うなだれるしかありませんでした。
