田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国のタクシーサービスが急成長している理由

 社会主義国中国では規制が多く、経済効率が悪いといったイメージがあるかもしれないが、規制が厳しいものもあれば、全くないに等しいものもある。個人の生活にかかるサービスなどは、後者のケースが多く、そのため、日本よりも進んだサービスも多い。

 中国のタクシーサービスは規制が緩く、参入者が多い。サービスの質は正直に言えば劣悪だが、価格に関して言えば、日本と比べ極端に安い。例えば北京であれば、3km以内ならば13元(221円、1元=17円で計算)、1km進むごとに1元(17円)、1回乗車ごとに1元(17円)の燃料付加税がかかるといった料金体系である。滴滴出行を使えば、ドライバーは顧客から厳しく評価を受けるため、安全運転を心がけるドライバーが多く、サービスの質は良いと感じる。

 滴滴出行の前身は2012年7月10日に設立されたベンチャー企業(北京小桔科技有限公司)である。設立から約3か月後に、iPhone向けにタクシー予約アプリを立ち上げると、その年の12月には、ベンチャーキャピタルであるGSR Ventures(欧米、シンガポール、香港などからの資金が多い。アーリーステージの中国ハイテク企業を中心に投資)から300万米ドルの資金を調達している。その後も、2013年4月にはテンセントから1500万ドルの資金を調達。2014年1月にはCITIC産業ファンドから6000万ドル、テンセントから3000万ドル、その他機関投資家から1000万ドル、合計で1億ドルの資金調達を行っている。

 金融機関からは資金に加え、財務戦略やM&A戦略などでの協力を得ながら、タクシーの予約アプリを出発点として、業容、事業規模を飛躍的に拡大させている。設立後わずか5年で、同社は、テンセント、アリババ、百度、ソフトバンクや、内外のベンチャーファンドが資金を供給し、経営を支える世界有数の企業となっている。その資金力はUberの中国ビジネスを買収するほどである。中国は、ベンチャー企業の育成システムにおいて、グローバル化、自由化の面で、タクシーサービス以上に日本の先を進んでいる。

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