田代尚機のチャイナ・リサーチ

苦境に立つ韓国企業 サムスン電子が中国で大苦戦を強いられるワケ

 韓国は2016年7月、THAADミサイル(高高度防衛ミサイル)を在韓米軍に配備することを決定。その後、中国において大規模な韓国製品のボイコット運動が行われ、政治面からの影響でギャラクシー(サムスン電子)の中国でのシェアが減少したといった面もある。

 しかし、それ以上に、中国企業が急速に力を付けたことでサムスン電子が競争に敗れたといった面の方が要因としては強いとみられる。

「ホワイト国」から外されれば電子機器・自動車も大きな打撃

 同じことがテレビでもいえる。液晶テレビが出回り始めた10数年前にはサムスン電子やLG電子といった韓国メーカーがソニー、シャープ、パナソニック、東芝などの日本企業を打ち負かし、中国市場を席巻したが、今や、そのサムスン電子やLG電子も、海信、スカイワース、長虹、康佳といった中国企業との競争において劣勢に立たされており、かつての日本企業と同様、高級品市場で生き残りをかけてもがいているといった状況になりつつある。

 サムスン電子の収益の柱は、スマホ、テレビを含むディスプレイのほかに、メモリを中心とした半導体などがあるが、中国は今、米中貿易戦争の影響もあり、国を挙げて半導体の開発を加速しようとしている。サムスン電子はいずれ中国企業の激しい追い上げを受けることになるだろう。

 もう少し大きな時間軸で、ここ数十年の世界の産業構造の変化を振り返ってみると、日本が得意とした分野を奪うように産業を発展させてきたのが韓国である。しかし、日本の電器産業衰退の歴史を今、韓国電器メーカーが辿ろうとしている。

 既に中国本土市場では、電器・電子製品について、主戦場となるボリュームゾーンにおいて、韓国企業は中国企業に歯が立たなくなっている。中国企業の強みは世界最大の市場を背後に持ち、量産効果が出るという点であり、くわえて激しい市場競争を潜り抜けてきていることからコスト競争力が強いという点である。本土市場を制圧した中国企業が海外にも販路を拡大し始めており、韓国企業のシェアを脅かそうとしている。

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