田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国はコロナ封じ込め策の代償で急激に景気悪化、米国の選択は?

 もしアメリカが、中国を参考にして厳しい封じ込め政策を採ったとして、はたして中国で起きたような急激な景気悪化を容認できるだろうか。

 景気悪化は、まず、金融市場を直撃する。リスクを取りたくない銀行は貸し剥がし、貸し渋りを行い、正常な借り換えさえ拒みかねない。社債市場では、デフォルトが多発しかねない。

 最も心配なのはエネルギー産業だ。景気減速による需要減少見通しに加えサウジアラビアの戦略的な増産により、原油先物価格が急落している。アメリカのシェール(頁岩)産業は採掘コストが高く、財務体質の脆弱な企業が多いため、今後、こうした企業は経営難に陥りかねない。

 逆に中国のような厳しい封じ込め政策を打ち出さないとすれば、回復までに長い時間かかるだろう。今年の11月に大統領選を控えたトランプ大統領としては、できるだけ早く収束させたいはずである。

 結局のところ、短期収束を狙い、厳しい政策を打ち出す一方で、短期的な景気悪化、金融市場の混乱を抑えるために全力で金融緩和政策を打ち出し、積極財政政策を通じ需要拡大を図るといったポリシーミックスを行うほかないのではなかろうか。

 主な封じ込め政策として、トランプ大統領は13日、イギリスを除く欧州について30日間の入国禁止措置を発動、16日には10人以上の集まりや旅行、レストラン、バーなどでの外食を今後15日程度自粛するよう勧告した。この時には、新型コロナウイルスの流行について、7~8月頃ごろまで続く可能性があると発言している。また、アメリカ疾病対策センターは15日、今後8週間にわたって50人以上が集まるイベントの中止または延期を要請した。

 こうした政策によって今後、航空産業、ホテル・レストランなどのサービス産業を中心に、広く消費関連産業が影響を受けることになるだろう。

 景気への悪影響がいつまで続くのか先が見通せない。アメリカ株式市場は下値模索が続きそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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