中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

酒税法に翻弄されても企業努力を続けるビール会社にエールを送ろう

 メーカーの立場に立つと「我々はなんとかビールに近い味のおいしい飲料を作るべく涙ぐましい努力をしてきたというのに……。ここまでキチンと技術革新をし、おいしくしてきたのに梯子を外すのですか!」と言いたくなっても当然です。

 私は、基本的には発泡酒も新ジャンルも飲みません。理由はビールの方がおいしいと思っているからです。その一方で、高すぎるビールの税金を回避し、消費者のためにと発泡酒と新ジャンルを生み出してきたメーカーの努力には頭が下がる思いです。

 正直、日本のビールメーカーの皆様方は「本当はビールの方がおいしいのは分かっているけど、なんとかビールに近づけようとこの25年ほど頑張ってきたんだよ! それで、ようやくこんなに安く、ビール系の飲料を量産できるようになったのに、なんで税率を変えるの!?」と言いたいはずです。

 はい、本当にこの通りです。いわゆる「企業努力」というものをお役所が変えてしまうことについて私は違和感を禁じ得ません。完全に税率が一本化されるのは2026年10月まで待つわけですが、ビールメーカー各社は再び「発泡酒」「新ジャンル」に慣れた方々のために新たな味を開発することになるでしょう。

 税率の間隙を縫って「発泡酒」「新ジャンル」を生み出したメーカー各社は、当然これからの5年半ほどの戦略は練っていることでしょう。一ビールファンとしては、本当にその努力と国の無茶振りへの対応に感謝しています。これからもおいしいビール及びビール系飲料を提供してくださいね。心から応援しています。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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