中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

なぜ父は往復3時間超の通勤時間を「無駄ではない」と言ったのか

「お前は通勤時間は無駄だと思っているみたいだが、朝の通勤では日経新聞を読み、帰りは本を読めばいい。通勤時間というものは実に有意義な時間を過ごすことができる。どちらにせよ、新聞や本を読む時間というものは有意義なものであり、それを電車の中で読むか、それ以外の場所で読むかの違いでしかない」

 これは一理あるのですが、「いや、新聞と本を読むならば、より快適な空間で読んだ方がいいのでは? そもそも満員電車のような劣悪な環境は不快でしかない」と正直思いました。私も父に倣ってなんとか電車の時間を有意義にしようと本を読んだりしたのですが、やっぱり苦痛でしたし、1日に3時間20分も通勤・帰宅に使うのはバカバカしいと思うようになりました。

 そして、この“痛勤”生活は1年で諦め、山手線の恵比寿駅から徒歩3分の場所に家賃11万円の部屋を借りました。これで会社までの通勤時間は25分に短縮されました。とはいえそれでも朝の山手線ラッシュはやっぱり苦痛。次に引っ越した駒場東大前からは、35分かけて自転車で会社まで行くようになり、ようやく快適通勤生活を手に入れられたのです。

 多分、世の中には満員電車がそれほど苦にならない方がいるのでしょう。私の父がその一人です。ただ、一つ思うのは、父は38歳の時に家をローンで買ったことを正当化したかったのではないか、ということです。

 もちろん、これまで頑張って働いてきてマイホームを購入できたことはすばらしいことだと思いますし、子供としても非常にありがたかったです。でも、都心への通勤がラクな場所ではなく、郊外の立川のさらに駅から徒歩25分という場所。

 ワシは一国一城の主じゃ! 思えば長かった。ワシは38歳にしてマイホームを手に入れた。ようやく立派な大人の仲間入りじゃ! ……なんて気持ちがあったのかもしれません。となれば、片道1時間40分の通勤時間を正当化したくなる気持ちも、少しは理解できます。

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