キャリア

高齢夫婦2人世帯の生活満足度の低さ「夫の妻への依存度」下げれば解決も

 名古屋在住の60代男性Aさんは、長く東京での単身赴任生活を送っており、妻が暮らす名古屋に戻るのは月に2~3回という生活を続けていた。

「それが定年再雇用で嘱託になってからは、名古屋支社の勤務になり、さらにコロナ禍でほとんどがテレワークになって、家にいる時間がかなり増えました。そういう生活になってから3か月ほどした頃に、家内がいきなり体調を崩したんです。私が細かい性格なもので、家事が行き届いていないことなどを注意していたら、それでメンタル面の不調に陥ってしまったとのことで、かなりショックでした。私も単身赴任生活では自由気ままにやってきましたが、それは家内も同じだったんですね……」(Aさん)

 夫婦それぞれが自由だと感じられる生活を送れているかどうかは、生活の満足度に直結するというわけだ。

「食の自立」を考える

 前出・辻川氏は、高齢世帯への調査の結果から「とりわけ男性が『食の自立』を心懸けることが大切です」と指摘する。

「60歳を過ぎて定年退職してからも、毎日三食、妻の手料理を食べたいといった考え方は捨てたほうがいい。もっと合理的になるべき。冷凍食品や総菜、コンビニ食を活用すればいいし、栄養バランスはビタミン剤の摂取などでも補えます」

 そういった工夫をすることで、妻への依存度が下がり、夫婦での暮らしの満足度が上がっていくという考え方である。

「夫婦といえども、考えの違いはあって当然です。法律違反と迷惑行為以外は相手の考えを認めるくらいの気持ちを持ちたい。もちろん、一緒に歳をとれば、どちらか一方の体調が悪くなるといった局面も訪れます。自分の具合が悪い時だけ助けてほしいと求めていては、夫婦での生活はなかなかうまくいきません。次は自分の具合が悪くなる番がやってくると考えて、相手をフォローしてあげるといった配慮が大切です」(辻川氏)

 妻と過ごしている時から、自立を心懸けていけば、「夫婦で」の生活がよりよいものになるだけでなく、「ひとりで」となってからも惨めな思いをせずに済むわけだ。

「嫌な顔ひとつせずに、なんでも完璧に助けてくれる神様のようなお子さんがいるなら、親子で同居して助けてもらえばいいが、そんなケースはなかなかない。それであれば、最後はひとりになる生活を前提に生きていくのがいいのではないか」(辻川氏)

※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。