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「それでもテメェは親か!」93才母を罵った60代女性の「自宅介護の限界」

 介護4か月目に入ってから、誰かの顔を見ればその人に、母親への悪感情を話さずにいられない。親と同居している人が多い田舎では、同居からいつの間にか介護になっている人が多くて、グチる相手にはこと欠かないのよ。

 それでわかったんだけど、「施設に行かせるなら死んでやる」は、ちょっと気の強い老人はみんな言うらしいね。「オレなんか死ねばいいと思っているんだっぺ」と言われると、つい「うん」と言いそうになる。

 母親は、今日やって来た訪問看護師さんに、弟がどれほど親身に世話を焼いてくれるかを自慢している。弟は公務員で、仕事が終わると実家に来て、私の負担を少しでも減らそうと、家事やシモの世話をしてくれるんだけど、「その弟と比べて、これは」と私をチラ見して顔をしかめるの。「なんだと~!」と声を荒らげそうになった私に、若い看護師さんは静かな声で「どこでもそう。いちばん身近でお世話している娘さんのことはよく言わないんだよね」と言う。

 ほんと、娘って何なのか考えちゃうよ。もちろん娘が憎くて、ではなく、憎いのは老いた自分、自由にならない手足、動かない頭だと思う。それを嘆いても仕方がないから、自分の分身と勘違いしている娘に当たるんだよね。

 そこまでわかっていても、ヤクザ口調で親を怒鳴るようになったら限界なんだって。茨城の友人が言うんだわ。「舅・姑の介護は嫁の役割でしているから割り切れるんだけど、実の親が90才過ぎるまで介護をした人って、親を見送ってから数年後に亡くなることが多いんだよね」と。

 その言葉で私は施設に入所させる決断ができたのよね。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2022年1月1日号

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