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宮崎「餃子日本一」で三つ巴の戦いに 浜松「残念」、宇都宮「順位は関係ない」

宇都宮市内の餃子店が集まる「餃子通り」には餃子形防犯灯も設置されている(時事通信フォト)

宇都宮市内の餃子店が集まる「餃子通り」には餃子形防犯灯も設置されている(時事通信フォト)

宮崎は1990年代の宇都宮と重なる

 昨年の年間購入額3693円から大きく金額を落とし、今年3129円で35年ぶりの3位となったのは宇都宮市だ。宇都宮餃子会の鈴木章弘さんは、「順位にはこだわっていない」と話す。

「そもそも宇都宮市の餃子は外食がメインで、宇都宮餃子会も餃子店の店主たちを中心とした団体なので、外食や惣菜餃子、チルド餃子の支出分が含まれない家計調査の結果は重視していません。順位を競っているわけでもなければ、その結果に一喜一憂する理由もないといったところでしょうか。昨年から、家計調査の購入額が500円以上落ちている要因については分かりませんが、餃子店がスーパーに卸した冷凍餃子の売上は伸びていると聞いているので、私たちとしてはそれほど大きく変わった実感はないですね」

 餃子による街おこしの先駆けと言える宇都宮餃子会の取り組みについて、鈴木さんが語る。

「宇都宮餃子会は1993年の発足以来、30年以上餃子の街づくりに力を入れてきました。発足当時、テレビのバラエティ番組で7週にわたって『宇都宮餃子大作戦』として特集が組まれたのをきっかけに、宇都宮餃子の知名度が爆発的に上がり、その番組でJR宇都宮駅前に餃子像が設置され、今では宇都宮のシンボルになっています。

 また、1998年から毎年11月には宇都宮餃子ファンに向けて『宇都宮餃子祭り』を開催(2020年、2021年はコロナの影響で中止)し、さらに2018年には餃子店が立ち並ぶエリアに餃子をイメージしたマンホールや街灯をを設置した『餃子通り』を作ったりと、味はもちろん、質や環境など『名実ともに餃子の街であれ』という理念を掲げて、行政と一緒に取り組んでいます。そうした地道な活動を続けてきた私たちとしては、街づくりという本来の目的に沿えば、購入額の順位は重要ではないのです」

 小野寺さんも、「家計調査の年間購入額ばかりが注目されがちだが、3都市それぞれで競うポイントが異なる」と話す。

「宇都宮市は、持ち帰りなどの内食より外食に大きくシフトしているため、首位争いにあまり興味がありません。それよりも、30年以上の歴史の中ですでに餃子が産業として確立しているので、その地位を変わらず維持していこうという思いがあるのだと思います。宇都宮餃子会自体、市役所の担当者が家計調査に注目したことがきっかけで発足したという経緯もあって、最初から行政や観光協会が協力的です。確固たる地位と行政の協力のもと、強い推進力で今後も街を盛り上げていくでしょう。

 官民一体という点では宮崎市も同じです。宮崎市ぎょうざ協議会が設立されてからまだ2年目と歴史は浅いですが、1990年代の宇都宮と重なるものがあります。宮崎市は、今後餃子を軸にして第一次産業全体を盛り上げたいという目的があるため、それに向けて行政だけでなく農業協同組合や観光協会などと連携しながら進めていく体制が整っています。今の勢いに乗って、どれだけ認知を広げていけるかに注目ですね。

 浜松市の浜松餃子学会は、餃子を愛する有志たちが集まって生まれたという成り立ちから、宇都宮、宮崎ほどの行政の強い後押しはありません。盛り立てたい気持ちはあるのでしょうが、利益を目的とした業界団体ではないため、誰かが得する構造になっていないのです。行政が餃子を観光資源にしたいという動きもあまり見られないので、今後他の2都市と比べて年間購入額に差が生まれやすい状況にあります。しかしそれでも、長年上位をキープしていることは浜松市民の“餃子愛の賜物”と言えるでしょう」

 小野寺さんは、今後の餃子戦争は「これまでの“2強”時代から三つ巴の状態が続く」と見る。3都市それぞれの強みを活かした取り組みで、今後も餃子業界を盛り上げて欲しい。

毎年11月に開催される「宇都宮餃子祭り」では老若男女が熱々のギョーザをおいしそうに頬張る(写真/2018年、時事通信フォト)

毎年11月に開催される「宇都宮餃子祭り」では老若男女が熱々のギョーザをおいしそうに頬張る(写真/2018年、時事通信フォト)

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