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「鉄道は科学の入口になる」人生の大半を鉄道に捧げたライターが断言する理由

鉄道を起点に、知らない世界へ

 鉄道は、人間が陸上で人や物を安全に運ぶために考え出した工夫やノウハウを凝縮させた結晶です。その凝縮に費やされた時間を、紀元前3000年ごろの車輪の発明から現在までと定義すると、ざっと5000年に及びます。

 この観点から鉄道をじっくりと観察し、そこに凝らされた工夫やノウハウを「なぜこうしたのか?」と考えながら、この結晶を少しずつ分解してみてください。

 そうすると、きっと今まで見えなかった何かが見えてくるでしょう。そしてより細かく分解すると、先ほど紹介した学問分野が背景にあることに気づくことでしょう。

 ここまで抽象的なことをサラッと書きましたが、この分解作業はかなり難しいです。私の場合は、これまでの50年以上の人生の多くをこの作業に費やして、やっと「なんとなく鉄道の全体像が見えてきたかな?」と思えるようになりました。「鉄道は科学の入口になる」と考えるに至ったのは、このためです。

 さあ、これまで紹介した内容を踏まえつつ、「鉄道はたんなる乗り物にすぎない」などという先入観を捨てて、あらためて鉄道と向き合ってみてはいかがでしょうか。鉄道を起点にして、自分がこれまで知らなかった世界に足を踏み入れてみると、案外楽しいかもしれません。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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