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米国経済を牽引した「GE帝国」の盛衰 数字のみ追い求めガバナンスを軽んじた末路

GEはどこで足を踏み外したのか(時事通信フォト)

GEはどこで足を踏み外したのか(時事通信フォト)

『GE帝国盛衰史──「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(著・トーマス・グリタ、テッド・マン/訳・御立英史)

『GE帝国盛衰史──「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(著・トーマス・グリタ、テッド・マン/訳・御立英史)

 国家を代表するような巨大な企業であっても、その栄華が永遠に続くわけではない。その好例が、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社だろう。「最強企業」はいかにしてその企業価値を失っていったのか──。ノンフィクション作家の岩瀬達哉氏が、話題書『GE帝国盛衰史──「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』(トーマス・グリタ、テッド・マン・著 御立英史・訳/ダイヤモンド社)を読み解く。

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 発明家トーマス・エジソンの電球からスタートしたゼネラル・エレクトリック(GE)は、140年近い歴史にわたって米国経済を牽引し、「2000年のピーク時には、米国で最も価値のある企業」と称された。

「世界の電力の3分の1を発電」する原子炉や巨大な発電タービンのほか、ジェットエンジン、精密医療機器の超音波診断装置を製造。一方で、大衆向けの洗濯機、トースター、テレビなど「目眩がするほど多様な製品」を生み出し、その企業価値は「6000億ドル」(当時のレートで61兆2000億円)にまでのぼったが、いまやそのかけらほどの値打ちもない。

 伝統あるコングロマリットの衰退は、その絶頂にはじまっていた。「同世代で最も偉大な経営者」と呼ばれていたジャック・ウェルチは、この時、みずから後継者を指名。しかし亡くなる直前、怒りとともにこぼしている。「最善の選択だと思ったが、そうじゃなかった」

 最後まで気づかなかったようだが、誰を指名していてもGEは成長どころか、凋落の一途をたどっていた。理由はウェルチの数字への異常なこだわりだった。

 ウェルチの求めた厳しい利益目標を埋め合わせる方法もまた、数字の操作だった。部下たちは「投資家保護のために義務付けられている会計処理のルールを拡大解釈したり、裏をかいたり、ときには無視していた」。こうして水増しされた利益を「攻撃的会計処理」と呼び、金融サービス部門のGEキャピタルを打ち出の小槌として使うことで、必要な現金を調達していたのである。この一連の操作は「GE社内では『麻薬』と呼ばれていた」。一度はじめると、やめられなくなるからだ。

 ウェルチから二代目、三代目のCEOにあっても、「最後に勝つのは気合いと根性だという、フットボールのコーチのような精神論」は消えることはなかった。数字のみを追い求め、ガバナンスを軽んじたとき、帝国はいとも簡単に崩れ落ちる。現代社会への警告のように響く。

※週刊ポスト2022年10月7・14日号

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