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快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

“ビッグシトロエン復活”となるプレミアムサルーン「C5 X」 走ってわかる「唯一無二の存在感」

シトロエンのプレミアムサルーンが10年ぶりに登場した

シトロエンのプレミアムサルーンが10年ぶりに登場した

 仏メーカー・シトロエンには、アッパーミドル用の高級車として、1955年に登場した「DS」というクルマがある。自動車ライターの佐藤篤司氏が「いまもってブランドの精神的な支柱と呼んでもいいほどの影響力を持つ、まさに名車」と評するこのクルマは、フランスの政府公用車として使用され、とくに第五共和国大統領であるシャルル・ド・ゴールが愛用したことも知られている。今のシトロエンにとって、そのDSのポジションに当てはまるのが、今回の「C5 X」。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、佐藤氏が“ビッグシトロエン復活”となる同車に試乗して感じた“フランス車らしさ”をレポートする。

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 まず、シトロエンのプレミアムサルーンについて少し振り返ります。名車とも言われる「DS」の後を引き継ぐ形で1974年には「CX」、1989年に「XM」、そして2005年には「C6」というフラッグシップが存在してきました。その各モデルに共通していたのはDSより「ハイドロニューマチック・サスペンション」というサスペンションが、進化しながら与えられてきたことです。

 ハイドロは「水」、ニューマチックは「空気」の意味ですが、実際には空気ではなく窒素ガス、水ではなく専用オイルを用いた、非常に個性的なサスペンションです。最大の魅力は「魔法の絨毯」とも評される乗り心地。よくフランス車に共通する乗り心地として「ネコ足」という表現が使われますが、実はその味ともまた少し違った、ふんわりと空中浮遊するような絶妙なる快適性があります。そのシステムの独自性や忘れがたい乗り味を持ってして「20世紀を代表するサスペンション」という人までいるほどです。ただし、歴代モデルに採用されてきた、このサスペンションの信頼性を維持するためには、それなりにメンテナンスも必要でしたし、トラブルの覚悟もしなければいけませんでした。

 そんな理由もあってか、C6に採用された「ハイドラクティブIIIプラス」以降、他のモデルに採用されることはありませんでした。同時にこのC6が2012年にラインナップから消えると、プレミアムなポジションを担うモデルまでも不在となってしまいました。それから10年、久しぶりにフラッグシップとして登場してきたのが今回の「C5 X」です。久方ぶりの“ビッグシトロエン復活”と言えるのですが、じつは歴代のビッグシトロエンに与えられてきたサスペンションではありません。

 ニューモデルには高度な電子制御とコイルスプリングによる最新のサスペンションが採用されています。これで過去にあった信頼性への懸念も解消されたことで、サスペンションの信頼性は上がります。その上で「DSを彷彿させる乗り心地を再現した」とも表現されるほどの仕上がりだそうです。筆者自身、過去にハイドロニューマチック・サスペンションの乗り心地に魅了され、幾度となくシトロエン車の購入を考えただけに、なんとも気になるニューモデルの登場というわけですが、このクルマにはさらに進化したハイドロニューマチック・サスペンションもなければ、時代を一歩も二歩も先行く近未来的なインテリアもありません。シトロエンのフラッグシップだということ以外、共通項を見つけられないまま、新世代のビッグシトロエンの魅力を探すドライブが始まりました。

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