キャリア

元『¥マネーの虎』南原竜樹さん 年商100億円社長が45歳でホームレスに転落、どん底からの復活劇

「キックボクサー」としてもデビュー(撮影/山崎力夫)

「キックボクサー」としてもデビュー(撮影/山崎力夫)

還暦過ぎて「キックボクサー」デビュー

 MGローバーの破綻から10年を費やしてV字回復を果たし、年商100億円の世界に戻ってきた南原さん。さらに上を目指すかと思いきや、還暦を前に手持ちのほとんどの会社を売却して身軽になった。日本の経済界では社長やオーナーの高齢化が進むが、なぜ経営の第一線から身を引くことを決断したのだろうか。

「僕は、“老害化”した経営者をたくさん見てきました。高齢になった経営者がいきなり頓珍漢なことを言い出して、周囲を困惑させるケースも少なくない。だからちょっと早めに準備して、いろんな方に事業を引き継いでもらいました。僕の人生は第1クォーターが学生で第2クォーターが車屋、第3クォーターで多業種に展開して、今は第4クォーター。終活という言葉は使いたくないけど、この年になると病気になることもあり得るでしょう。経営者がある日突然倒れたら、会社にはとても大きなリスクになる。頭も体もしっかりしているうちに、自ら退くのが一番なんです」

 だが、南原さん自身は隠居する気はサラサラない。会社を手放した現在は50社ほどの顧問を務め、波乱万丈のキャリアで得たノウハウを下の世代に伝えている。還暦を超えても肉体は衰えず、2021年8月にはチャリティー格闘技イベントでキックボクサーとしてデビューした。前日計量では体重66.9kg、体脂肪率10%の肉体を披露して多くの人を驚かせた。

「主催者で元K-1選手の小比類巻貴之さんとの出会いがあり、皆さんのお役に立てればという気持ちで出場したんです。昔から筋トレを続けていて準備は苦しくなかったけど、試合に負けてあばらが2本折れて記憶喪失になった(苦笑)。でも面白かったよ。僕は新しいことに挑戦することが楽しいから、まだキックボクシングを続けるつもりです」

 とても62歳のセリフとは思えないが、実際に南原さんは見た目も気持ちも若々しく見える。これまでの業績をリセットして迎える、人生の最終クォーターで何をめざすのか。

「自分が何をしたいというより、周りの人たちの成功モデルをつくりたい。今の若い子は、驚くほどビジネスのやり方を知らないんですよ。今までのように自分が旗を振って人を成功に導くのではなく、若い人たちを陰ながら育てていくのがこれからの楽しみ。人間は年齢で役割が変わってくるんだよね。還暦を過ぎると自分のためじゃなく『孫の世代のために何かしてあげたい』という気持ちになるんですよ」

 そう語る南原さんの眼差しは冷徹ではなく、優しく温かい。これからは天国も地獄も経験した「温厚な虎」が、ビジネスの世界に飛び込む若者たちをサポートしてくれることになるだろう。

 そんなバイタリティに溢れる南原さんの礎は、すでに学生時代に築かれていたという。

後編につづく

取材・構成=池田道大

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。