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日銀・植田和男新総裁に託された“難しい舵取り” 長期金利問題の対応次第で株安・円安の“いつか来た道”へ

2016年開催のG7財務相・中央銀行総裁会議のシンポジウム。植田和男氏(左から3番目)も参加していた(時事通信フォト)

2016年開催のG7財務相・中央銀行総裁会議のシンポジウム。植田和男氏(左から3番目)も参加していた(時事通信フォト)

短期金利上昇なら“住宅ローン破綻”が増えるのは必至

 何よりの課題は、長期金利の上限を0.5%に抑え込もうとする「イールドカーブ・コントロール」にあるという。

「海外の投機筋が日本国債をどれだけ売り浴びせても、長期金利を0.5%に抑え込むためにいくらでも日銀が買ってくれるのでやりたい放題。このやり方は早晩行き詰まる喫緊の課題であり、これをどう解決していくのか。相当難しい舵取りが求められている」(同前)

 多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏も、こう指摘する。

「黒田路線がすぐ変わるかといったら、答えはNO。異次元金融緩和を10年にわたって続けてきた結果、金融政策を取り巻く問題は相当複雑化している。それら複雑に絡み合った問題を解きほぐしていくには当然、時間がかかるし、舵取りは相当厳しいものになるのは間違いないでしょう」

 解決を急ぐあまり、拙速に金利の上限を引き上げてしまえば、短期間で金利が高騰しかねない。そうなれば、長期金利を基準とする住宅ローンの固定金利が跳ね上がり、住宅が売れなくなるのは必至。不動産市場が崩れることで資産価格が下落するようになれば、株価も急落する。そして景気悪化懸念から日本円も売られ、再び「円安」が加速する懸念も浮上してくる。

「植田新総裁のやり方次第では、『株安』『円安』を招きかねず、そうなると、あの90年代初頭のバブル崩壊時と同じ、いつか来た道にまた戻ってしまうかもしれない」(前出・日銀関係者)

 それだけでは済まない可能性もある。

「長期金利の問題は待ったなしの状況だが、かといって金融政策の正常化を見据えれば、短期金利もいつまでも低水準に据え置くわけにはいかない。短期金利は住宅ローンの6~7割を占めるといわれる変動金利の基準となっていて、“目先で金利が低いから”という理由で飛びつく利用者も少なくない。しかも、上昇する金利の負担に耐えられないような人も少なくないはずで、短期金利まで上昇してしまえば“住宅ローン破綻”が増えるのは必至でしょう」(同前)

 日銀総裁は「物価の番人」と呼ばれる。その言動が日本経済、そして私たち日本人の生活を大きく左右する。植田日銀が日本経済をどう舵取りするのか、すべての国民が注視しておくべきだろう。(了)

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